トレーニング他

野球選手必見!増量時に知っておくべき食事と栄養

一般的に、野球選手の多くは中学生から高校生にかけて、高校生から大学生・プロにかけて約10kgずつ体重が増えていく(1,2)。中学校卒業時に体重60kgほどだった選手は高校3年生次には体重70kgになり、さらに大学に進学あるいはプロ野球や社会人へ進むと体重は80kg程度まで増量するといったケースがよく見られる。
当然、この間には身長も伸びていく。成長期における身体成長だけではなく、トレーニングや栄養摂取での体つきの変化を考えるには、体重だけでなくもう少し詳細な体組成、つまり体の中身の確認が必要となる。

増量時に知っておきたい「筋肉量」という指標

体組成は身長、体重から算出される体格指数BMI(Body Mass Index)や体脂肪率で評価するのが一般的だ。しかし、アスリートの場合はトレーニングにより発達した組織の重量が一般よりも多いため、BMIや体脂肪率に加え、間接的に測定した筋肉量や、体重から脂肪の重さを引いた除脂肪量を評価するのが妥当だろう。
そこで今回は、体重を増やすときに知っておきたい「筋肉量」について、そしてそれを増やすために必要な栄養について考えていきたい。

全身筋肉量がパフォーマンスに影響する

投手であれば投球速度、打者であればスイング速度は全身筋肉量や筋力と相関するというデータも報告されており(3,4)、筋肉量を増やすことが野球におけるパフォーマンス向上の一要因であると言える(図1)。

図1 除脂肪体重(除脂肪量)とスイング速度との関係

ところで、走塁や守備においてはどうだろうか?一般的な体力要素の一つとして、走力スピード(スプリント)がある。足が速いほど野球選手の走塁や守備には有利であることは考えられるが、体重を増やしすぎると明らかに走力は衰えを見せ、腰、あるいは膝・足首など下半身の負担が増えてケガに繋がることもある。

体重を増やすとスピードが落ちてしまう?

陸上短距離のサニブラウン・ハキーム選手は高校2年生の時に世界ユース選手権200mにおいて大会新記録で優勝した。タイムは20秒34、当時の公式プロフィールの体重は76kg(身長187cm)であった。20歳時の体重は83kg(身長190cm)で、約4年間で7kg体重が増えたが、タイムは20秒08と0.26秒縮んでいる。
このことから、よく言われている体重を増やすと「スピードが落ちる」や「重く感じる」というのは、体重の増やし方に問題があるように思える。

スピードを高めたければ脂肪は増やさない

野球と体力に関する多くの研究結果にあるように、野球選手にとって筋肉量を高めることがパフォーマンス向上に不可欠であることは間違いないだろう。
栄養は筋肉だけではなく骨や血液などの組織を作るため、身体づくりに有効な栄養摂取は、筋肉量だけでなく骨や他の組織の重量も含めた除脂肪量(体重から脂肪を除いた体重)を高めることになる。
参考:野球選手必読!トレーニング期に目指すべき体重・筋量の目安とは

つまり、単に体重を増やすのではなく、除脂肪量を高めるためにはトレーニングと栄養摂取の関連が不可欠なのである。特に食事量(=摂取カロリー)をひたすら増やして食べるよりも、食事のタイミングや質を高めることが大切だ。

また、スピードの低下や過度な関節への負担を考えると、相対的な脂肪量が増えすぎないような栄養摂取も大切だろう。
では、そのためにはどのような栄養の取り組みをすべきだろうか。
ここでまず、栄養を「食事」と「サプリメント」に分ける。サプリメントは用途によってさらに分類するが、そちらについては次回以降に記載することとする。

筋肉量を高めるための食事

たんぱく質摂取

除脂肪量を高めるためのたんぱく質摂取量について多数の報告があるが、それらを総合して考えると野球選手には1日当たり体重1kgあたり1.4~2.0gのたんぱく質摂取が適量と言えそうだ(5)。
食事から摂ることができるたんぱく質食品は、肉・魚・卵・乳製品・豆(大豆など)がある。アスリートは肉や卵をよく食べるイメージがあるかもしれないが、たんぱく質源という意味で言えば、どのたんぱく質源であっても身体づくりにそこまで大きな差はなく、むしろ、筋肉づくりを目的としたたんぱく質摂取法として重要なのは、摂取のタイミングや回数と考えられている(5)。

現在報告されている研究から、たんぱく質の1日の必要量を朝・昼・夕の3食だけでなく、各食事の間、あるいはトレーニング前後に摂取を増やし、1日5~6回のたんぱく質摂取により必要量を満たすのが良いだろう(図2)。

図2 体重80kgの選手のたんぱく質摂取スケジュール例

正しい食事による筋肉量の増加がポイント!

体重を増やす際に重要となる筋肉量や除脂肪量という指標、それらを増やすために必要な栄養素について解説してきた。全身の筋肉量(除脂肪量)を増加させること、またそれを増やすための正しい食事について理解することが重要である。食事のたんぱく質摂取法を変えるだけでも、筋タンパク質合成速度は変化し、除脂肪量を増加させることが可能である。
次回は、さらに効率よく除脂肪体重を増加させるための食事の摂り方やサプリメントについて解説していく。

参考文献
1. 平田治美, 高橋律子, 竹下浩一, 川野 因. ジュニア期運動選手の身体発育と 栄養素等摂取量の関わり. 東京農業大学農学集報. 50: 7-12. 2005
2. 葛原 憲治, 黒田 次郎. プロ野球選手の身体特性および体力特性について. 東邦学誌. 42(1): 29-35. 2013
3. 勝亦陽一,長谷川伸,川上泰雄, 福永哲夫. 投球速度と筋力および筋量の関係. スポーツ科学研究. 3: 1-7. 2006
4. 奥村浩正, 野球選手のバットスイングと体力要素の関係. 九州産業大学健康・スポーツ科学研究. 3: 29-36. 2001
5. Ralf Jäger, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr 14: 20, 2017

小井土 幸恵(こいど さちえ)

帝京大学スポーツ医科学センター 助教。専門はスポーツ栄養学。筑波大学大学院体育研究科健康教育学専攻修了後(修士)、森永製菓ウイダー事業部栄養士、ドームアスリートハウスニュートリションスタッフを経て、2020年から現職。栄養サポートによるアスリートの身体組成変化が、パフォーマンスの変化やケガの予防へどのように影響するかを主に研究し、効果的な身体づくりのための栄養サポートに取り組んでいる。