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トレーニング他

野球選手必見!体重を増やす前に知っておくべき1つのこと



目次
オフシーズンに体重を増やす理由
体重は脂肪で増やす?筋量で増やす?
体重増加は目的か手段か
目的と手段を整理して効果的にパフォーマンスUP
オフシーズンに身体づくりを目標にする野球選手は少なくない
写真はhttps://www.shutterstock.comより

「今年は体重を5キロ増やすぞ!」などとオフシーズンに身体づくりを目標にする野球選手は少なくないだろう。ではどのような方法で体重を増やせばよいのだろうか?食事なのかトレーニングなのか?それは「体重を増やす目的」によって大きく異なるといえる。
今回は、野球選手が体重を増やす前に知っておくべき1つの考え方、「目的と手段」について考察していく。
前回のトレーニング記事:体力向上って野球の上達にどう繋がる?真のメカニズムとは

オフシーズンに体重を増やす理由

プロ野球においてもここ5~10年間の傾向として「オフシーズン中に体重増加を図る」というトレンドがある。おそらく、翌年のシーズンにさらに高いレベルで活躍するために、筋量増加によるパワーアップを狙っているのだろう。シーズン中はほぼ毎日のように試合があり積極的にウエイトトレーニングを実施して筋量を増やすのが難しいため、試合のないオフシーズンの間にできるだけ体重を増やしておこうという意図が感じられる。

たとえば、除脂肪体重とスイング速度の間には正の相関関係がある。したがって筋量増加によって除脂肪体重を増やせば、スイング速度も向上する可能性はある(相関関係は必ずしも因果関係とイコールではないので、あくまでも「可能性」である)。また筋量の増加とそれにともなう筋力向上はスイング速度だけでなく、ピッチャーの球速向上等にも繋がる可能性がある(1)。したがって試合に向けてのコンディション調整を気にすることなく強化に専念できるオフシーズン中に、積極的にウエイトトレーニングを実施して体重増加を目指そうという戦略は、至極合理的なものだと言える。
参考:打者は体が大きい方が有利!?データで検証!

体重は脂肪で増やす?筋量で増やす?

しかし、とにかく体重を増やそうとしてお菓子や甘い物、ファーストフード、カップラーメン、揚げ物などのカロリーが高いものをドカ食いしている野球選手のエピソードを耳にすることがあり、そういう場合は「ちょっと、それは違うのではないか?」と違和感を覚える。おそらく、そういう野球選手たちは「プロ野球選手がオフシーズン中に体重増加を図る」という最近のトレンドを耳にして自分もやってみようと考え、体重を増やすための方法として「とにかくカロリーが高いものをドカ食いする」ことを選んだのだろう。考え方としては論理的に聞こえなくもないが、このエピソードを耳にした方の多くは、私と同じように違和感を覚えたはずだ。

体重増加は目的か手段か

スイング速度等の向上を目指してオフシーズン中に体重増加を図ることは合理的だとする一方で、体重を増やすためにカロリーが高いものをドカ食いするのはダメだと断罪するのは、矛盾しているように思われるかもしれないが、そんなことはない。このあたりの考え方を理解するのは難しいかもしれないが、「目的 vs. 手段」ということを意識すると、頭の中を整理するのに役立つ。
プロ野球選手にとって、オフシーズン中の体重増加は目的ではなく手段である(図1)。あくまでもスイング速度や球速等を向上するのが目的であって、体重増加はそれを達成するための手段の1つに過ぎないのである。

図1 目標、手段、行動の関係。体重を増やすことはスイング速度UPのための手段である

つまり、ウエイトトレーニングを実施して筋量を増やす(≒体重を増やす)ことが筋力向上に繋がり、それがスイング速度等の向上にも繋がるだろうということだ。極論を言えば体重が一切増えなかったとしても筋力が向上し、それがスイング速度等の向上に繋がるのであればそれでいいのだ。逆にカロリーが高いものをドカ食いして体重が増えたとしても筋量が増えず筋力も変わらなければ、その体重増加がスイング速度等の向上に繋がる可能性は低いだろう。

目的と手段を整理して効果的にパフォーマンスUP

先述した高カロリーのものをドカ食いしてしまう野球選手の例は、「プロ野球選手がオフシーズン中に体重増加を図っている」という情報を仕入れた時に、彼らがなぜ体重増加を目指しているのかを深く考えず、とりあえず「体重を増やす」という部分だけを真似してしまったのがそもそもの間違いである。

つまり、目的と手段を勘違いしているのだ。あくまでも目的は「筋力強化を通じてスイング速度等を向上すること」であって「体重を増やすこと」ではない。「(筋量増加により)体重を増やすこと」は、筋力強化に繋げるための手段の1つにすぎない。体重増加の例に限らず最初は「手段」として実施していたことがいつしか「目的」に置き換わってしまい、本来の目的達成に繋がらないというのはよく目にする失敗パターンだ。一生懸命トレーニングをしているのになかなかパフォーマンスUPに繋がらないと悩んでいる場合は、手段と目的が入れ替わっていないか、もう一度確認してみてほしい。

河森直紀(かわもりなおき)
ストレングス&コンディショニングコーチ。ブロガー。セミナー講師。コンサルタント。アメリカとオーストラリアの大学院に留学、博士号を取得。国立スポーツ科学センターのトレーニング指導員として日本代表アスリート(フェンシング、自転車、スキークロスカントリー、スキージャンプ、etc)のS&C指導を担当。2017年にフリーランスのS&Cコーチとして独立。
【河森氏のブログはこちら】http://kawamorinaoki.jp/

参考文献
1. Yamada Y, Yamashita D, Yamamoto S, Matsui T, Seo K, Azuma Y, Kida Y, Morihara T, and Kimura M. Whole-body and segmental muscle volume are associated with ball velocity in high school baseball pitchers. Open access journal of sports medicine 4: 89-95, 2013.

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