打者は体が大きい方が有利!?データで検証!

2017年のホームランダービーで優勝したヤンキースのA.ジャッジ。昨年は52本のホームランを放ち最優秀新人選手賞に輝いた
写真はhttps://www.flickr.comより

打者は体が大きい方が有利なのだろうか?
メジャーリーグでは筋骨隆々な打者達がホームランを量産している。スタットキャストの登場により「バレル」という指標が注目され、新たな打撃理論が確立された今では、長打と打球速度の関係も明らかになり「いかに打球速度を高めるか」ということが重要視されている。
参考:【打撃特集2】注目の指標バレルとは?打球速度と打球角度の重要性

今回はメジャーリーグで屈指の打球速度を誇る強打者達と、残念ながらDL入りとなってしまったが打者大谷翔平の「体格」を比較し、どのような特徴があるかを探っていこう。

目次:
大谷翔平は体重は軽いが打球速度は速い!
長打を打つには筋量を増やした方がいいの?
二刀流大谷翔平を支える理想の体格とは?

体格は大きくないが打球速度はトップレベル!

日本では体格が大きいと言われてきた大谷だがメジャーリーグの強打者と比較すると実はそこまで大きくない。表1に、メジャーリーグの打球速度ランキングトップ5の打者と大谷の体格を示した。

表1 MLB打球速度ランキングと体格の関係(6/11現在)。大谷は体重当たりの打球速度が高い
順位名前身長(cm)
体重(kg)
打球速度
(km/h)
打球速度
(体重比)
1A.ジャッジ
(ヤンキース)
201
128
155.71.22
2J.ギャロ
(レンジャーズ)
196
107
153.31.43
3M.オルソン
(アスレチックス)
196
104
153.31.47
4J.D. マルチネス
(レッドソックス)
191
100
153.31.54
5D.パルカ
(ホワイトソックス)
188
100
153.21.53
20大谷 翔平
(エンゼルス)
193
92
149.21.62

大谷は身長193センチ体重92キロと、他の打者に比べると明らかに体重が軽いのがわかる。大谷よりも身長の低いJ.D. マルチネスやD.パルカの体重は100キロ近い。A.ジャッジを始め他の打者達と比較すると大谷は“身長のわりに体重が軽い選手”と言える。

体格から見ると一見不利とも思われる大谷だが、体重当たりの打球速度をみると1.62と他の打者よりも高い。つまり、体重の割に打球速度が速いのだ。仮に、体格が大きく打球速度が速いA.ジャッジを「パワー型」とするならば、大谷のようにA.ジャッジほど体は大きくないが体重当たりの打球速度が高い選手は「技術型」と定義付けできるかもしれない。

今、メジャーリーグでは前者の「パワー型」の打者が増え、いかにホームランや長打を打つかということにフォーカスしている。長打を打つためには打球速度を高める必要があり、打球速度を高めるためにはスイング速度を高めることが必要だ。では、スイング速度はどのように高めていけばよいのだろうか。
参考:【打撃特集4】打球速度を決める運動量とは!バットの質量×スイング速度

メジャーの強打者にパワー型が多い理由

メジャーリーグの強打者にパワー型が多い理由、それはバットを速くスイングするという力発揮のメガニズムと筋肉の量(以下、筋量)が関係している。

筋量が多い人ほど大きなパワーを発揮する、つまり速く動けるのである。例えば、走り高跳びのように高く飛ぶ動作においては、速く強く地面を蹴るという動作が、高く飛ぶことにつながる。
野球のバッティングにおいては、バットを速く動かすことがバットスイングを加速させることにつながる。この「速く動く」ことは高いパフォーマンスを発揮するために必要不可欠なのだ。

図1は除脂肪体重とバットのスイング速度の関係を表した図だ。除脂肪体重とは体重から体脂肪量を引いたもので、筋量、骨、内臓等の総量のことだ。これが筋量の目安となる。

図1 除脂肪体重とバットスイング速度の関係(笠原ら 2012)。除脂肪体重が多いとスイング速度は高まる

横軸は除脂肪体重、縦軸はスイング速度を示しており、除脂肪体重が多い人ほどスイング速度が速いということがわかる。筋量が多く大きなパワーを発揮できるとスイング速度を高めることができるのだ。

さらに、筋量が増加しスイング速度が高まると、打球速度が高まり長打が増えやすい(図2)。そのためメジャーリーグの強打者たちは筋力トレーニングで筋量を増やしていたのだ。

図2 長打と筋量の因果関係

二刀流大谷翔平を支える理想の体格とは

怪我で離脱している大谷だが、メジャー移籍後というもの投・打どちらにおいても見事な活躍をみせている。打者大谷はトップ打者らと比較すると、体重が軽くパワーがあるとは言えないが打球速度はトップクラスだった。これこそが打者大谷の大きな特徴であり、この打球速度を記録できるスイング技術の高さもメジャートップクラスと言えるのではないだろうか。
となると、大谷は筋量を増やせば打球速度をさらに高められるかもしれない。しかし、二刀流の彼には一概にそれがプラスになるとは限らない。なぜなら投球には多くの技術要素が複雑に絡んでいるからだ。二刀流の大谷に合った体力特性があるのだろう。

怪我で離脱している大谷だが、リハビリ中のトレーニングで怪我をしにくい体力づくりに励みDL復帰後ますます活躍してくれることを期待したい。

引用:
・笠原ら: 大学野球選手のバットスイングスピードに影響を及ぼす因子(Strength & Conditioning journal 19(6), 14-18, 2012)
・東京大学教授石井直方の筋肉の科学(ベースボールマガジン社)

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