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プロ野球本塁打王の体格はメジャー平均並!?データで比較

プロ野球や高校・大学の神宮大会も終わり、シーズンオフに入った。シーズンインまでに身体に大きな負荷をかけたトレーニングを行うチームや、体重を増加させたいという選手も多いのではないだろうか。一方、「体重は増やしたほうがいいの?」「理想の体重は?」といった疑問がある選手もいるかもしれない。
ところで、各スポーツ競技は求められる運動様式やトレーニング内容が異なる。そのため、身長、体重といった体格の値には各競技の特性が表れる。野球競技でも同様に、ホームランを打つ選手、盗塁をする選手などの役割が異なる選手は、それぞれに適した体格を有していると考えられる。そこで今回は、プロ野球選手、メジャーリーガー、高校球児の体格について比較を行った。また、野球と他の競技との体格も比較し、野球選手の特徴をあぶり出した。

目次:プロ野球本塁打王の体格はメジャー平均並!?データで比較
体格を評価するBMIとは?
プロ野球本塁打王のBMIはメジャー野手と同程度?
自分のBMIを知ってトレーニングに生かそう

相対的な体格の指標BMIとは?

体格を評価する代表的な指標には、身長・体重がある。身長は長育(身体の長軸に沿った計測値)、体重は量育(身体の質的計測値)の代表的な基準だ。これらの計測は比較的容易かつ正確である。しかし、図1に示したように、体重は身長に比例して大きくなるので、身長が増加している成長期の選手や、身長が異なる他選手と体重を比較する場合には注意が必要である。

図1 野球選手における身長と体重の関係

そこで、今回はBody Mass Index(以下、BMI)に着目した。BMIは体重を身長の2乗で除す(体重(kg)/身長(m)²ことで得られる体格の相対的評価指数だ。この値が高くなるほど、身長のわりに体重が多いということを意味する。BMIは、身体を構成する体脂肪量とそれ以外の除脂肪量の両方を含んでいる。脂肪量が少ないアスリートであれば、BMIは除脂肪量(筋量の指標)として活用できる。一方、脂肪量が多い選手や減量したい選手については、BMIと体脂肪率を合わせて評価する必要がある

プロ野球本塁打王のBMIはメジャー野手と同程度

まず、ボールを遠くに飛ばす能力に長けた選手を抽出するために、本塁打王のタイトルを獲得した日本プロ野球(NPB)野手のBMIを算出した(表1)。その値は26.9であり、MLB野手の平均26.6と同程度の値だった。

表1 野球選手の身長、体重、BMIの平均値

上記データの詳細:NPB選手2238名(1965年生まれ以降)、MBL選手1362名(2016年時)、高校生一般男子(文科省データ)、一般球児1616名(著者調査)、甲子園出場球児1235名(著者調査)、大阪桐蔭ベンチ入り選手

ボールとバットの衝突を力学的に考えると、ボールがバットの同じ位置に当たった場合、バットのスイングスピードが速いほど打球スピードは速くなる。MLB選手を対象とした研究によると、体重とホームラン数との間に正の相関関係があること、打率と体格との間には関係がないことが報告されている(引用1)。
NPB本塁打王の身長がNPB野手の平均値と同程度であることを考慮すると、BMI(特に体重)を増加させることが、打球飛距離向上に繋がる可能性が考えられる
参考:フライボール革命は本当に日本人には不可能なのか?データで検証

また、NPB本塁打王のBMIは、日本人男子トップアスリートの柔道軽量26.3と近い値だった(表2,引用2)。陸上投擲はBMI28.9と高い値だが、「投げる」という野球の投球と同類の運動である。扱う道具は異なるが、いずれの競技も道具に対して短時間に大きな力を加えることが重要だ。従って、ボールを遠くに飛ばしたい選手には、投擲選手と類似したトレーニングが求められると考えることもできる。

表2 日本人男性トップアスリートの身長、体重、BMIの平均値

プロ盗塁王のBMIは高校球児と同程度

野球では、速く走ることができる選手も必要だ。その最たるプレーが盗塁である。そこで、特に速く走ることができる選手を抽出するため、盗塁王のタイトルを獲得した選手のうち、本塁打を20本以上打ったことがない選手のBMIを算出した(表1)。NPB盗塁王のBMI23.7は、NPB野手の平均値よりも低い値で、甲子園に出場した高校球児23.9と同程度の値だった。

また、日本人トップアスリートの陸上短距離選手のBMI21.9は、盗塁王よりも低い値であった(表2)。BMIが高いことは、走行時の負荷が高いということを意味する。つまり、重い体を動かすにはそれを動かすエンジン(筋量)が必要になる。
速く走れるようになりたい選手や、速く走ることに特徴がある選手の場合には、体重を増加することのメリットとデメリットをよく理解した上でトレーニング計画を立てる必要があるだろう
参考:野球選手必見!体重を増やす前に知っておくべき1つのこと

自分のBMIを計算してトレーニングに生かそう

本塁打を打つ選手と速く走る選手では、BMIに相違があることが分った。体重を増加させようか迷っていた選手は、まずはBMIを算出し、甲子園出場選手やプロ野球選手の値と比較してみてみよう。そして、「自分がどういった選手になりたいのか」を明確にした上で「体重を○kg増加させる」といった目標やトレーニング計画を立てることをお勧めする。力やパワーを増加させる、速く走ることを目標とするのであれば、体脂肪率の変化を観察しながらBMI(特に除脂肪体重)を増加させていくとよいだろう。

引用文献
1.Hamburg L, and Hines TM. Correlations for weight, height and two measures of batting performance, Percept Mot Skills, 88(2):466-8, 1999.
2.勝亦陽一ほか, 日本人男性一流競技者における除脂肪量指数(FFMI)および脂肪量指数(FMI)の競技種目差, トレーニング科学, 29(4), 317-327, 2018.

データ引用
・Major League Baseball オフィシャルサイト、https://www.mlb.com/.
・スポーツナビ,https://baseball.yahoo.co.jp/npb/.
・センバツ 2018 第90回選抜高校野球大会完全ガイド,ベースボール・マガジン社.
・日本プロ野球歴代全選手写真名鑑―1936ー2014,ベースボール・マガジン社.

勝亦陽一(かつまたよういち)
東京農業大学応用生物科学部 准教授。野球の能力に影響する環境要因・生まれ月・競技開始年齢・兄弟構成・練習頻度、などの調査研究等を行っている。中・高校生向けのトレーニング指導や講演(「考えてバッティングをするための科学的アプローチ」等)も多数行っている。
【勝亦氏のプロフィールはこちら】http://yo1walker.wixsite.com/katsumata-yoichi
【勝亦氏のTwitterはこちら】https://twitter.com/Katsumata_Yo