体力向上って野球の上達にどう繋がる?真のメカニズムとは

体力を向上させることが、どのように野球のパフォーマンス向上に繋がるのか

前回コラム(9/6)では野球選手が体力トレーニングをすることのメリットについて考察した。野球の練習だけを実施するのと比べて、体力を「より健康的に・より効率よく・より最大限に」向上することができるのが、体力トレーニングを実施するメリットだ。
では、体力トレーニングを実施して体力を向上させることが、どのように野球のパフォーマンス向上に繋がるのだろうか?野球選手にとっての体力向上の役割(=体力トレーニングが野球のパフォーマンス向上に繋がるメカニズム)は、大きくわけて2つある。

・ケガをしにくい身体づくり
・パフォーマンス向上のポテンシャルUP

今回はこの2つの役割について考えていこう。
参考:野球選手にとって体力トレーニングをするべき3つの理由

役割1:ケガをしにくい身体づくり

ケガをしていると試合に出場できず、チームの勝利に貢献することができない。また、ケガをしていると練習をすることもできず、一人のプレーヤーとして技術を磨くことができない。
したがって、体力トレーニングを実施してケガをしにくい身体づくりをすることができれば、直接的にも間接的にもチームの勝利に繋がるはずだ。実際に、体力トレーニングを実施すると、ケガの発生率が低下するというデータが存在する。たとえば、ウエイトトレーニングを実施すると、ケガの発生数が1/3以下まで減少すると報告されている(1)。
過去にケガをしたことのない選手に対して「ケガをしにくい身体づくり」の重要性を説いても、なかなかピンとこないかもしれない。しかし、大きなケガをしてしまってから後悔しても遅いのである。できるだけ早く「ケガをしにくい身体づくり」の重要性を認識して、体力トレーニングに積極的に取り組んでもらいたい。

役割2:パフォーマンス向上のポテンシャルUP

練習をすれば、現在自分が持っている体力を最大限に活かして野球の動きを実施する能力が磨かれる。しかし、練習だけしか行わないと、「現在自分が持っている体力」という枠組みの範囲内で、自分が持っているものを上手に運用することしかできない
そういった作業に加えて、練習とは別に体力トレーニングを実施して、「現在自分が持っている体力」という枠組みを広げることができれば、野球選手としてのポテンシャルも広がるはずだ。
たとえば、筋力が足りないためにどれだけ練習してもできない動きがあったとしたら、体力トレーニングを実施して筋力を向上させることが、その動きを身に付けるのを助けてくれる。体力向上が野球の練習の効果を引き上げてくれるということだ。

体力が向上してもパフォーマンス向上には直結しない

その一方で、体力トレーニングを実施して体力が向上すれば、すぐに野球のパフォーマンス向上に直結するわけではないのもまた事実である。
たとえば、打者が試合の日の朝に目が覚めたら、魔法にかかって全身の筋力が急に向上していたとする。この選手が、その日の試合で大活躍できるかというと、必ずしもそうとは限らない。急激に向上した筋力をうまく制御できず、かえってバットのスイングスピードが落ちてしまい、まったく打てなくなるかもしれない。
しかし、その後この選手が練習を積み重ねて、新たに手に入れた筋力をうまく使いこなせるようになり、速くなったスイングスピードでボールを捉えられるよう調節することができれば、パフォーマンス向上に繋がるはずである。

つまり、体力トレーニングを実施して体力が向上してもパフォーマンス向上に直結するわけではなく、場合によっては一時的にパフォーマンスが低下する可能性があるが、新たに手に入れた体力を使いこなせるようになりさえすれば、パフォーマンスが向上する可能性が高いということだ。
体力トレーニングの役割を過大評価も過小評価もせず、正しく認識して、地道に取り組むことが、野球のパフォーマンスUPに結びつけるためには重要
である。

河森直紀(かわもりなおき)
ストレングス&コンディショニングコーチ。ブロガー。セミナー講師。コンサルタント。アメリカとオーストラリアの大学院に留学、博士号を取得。国立スポーツ科学センターのトレーニング指導員として日本代表アスリート(フェンシング、自転車、スキークロスカントリー、スキージャンプ、etc)のS&C指導を担当。2017年にフリーランスのS&Cコーチとして独立。
【河森氏のブログはこちら】http://kawamorinaoki.jp/

引用:(1)Lauersen JB, Bertelsen DM, and Andersen LB. The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med 48: 871-877, 2014.

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