野球選手にとって体力トレーニングをするべき3つの理由

野球の練習以外に体力トレーニングをするメリットとは

前回は「野球選手にとって体力トレーニングがなぜ必要なのか」を、ストレングス&コンディショニングコーチの河森直紀氏と共に考察した。今回は野球選手が体力トレーニングをするとどのような効果があるのか?そのメリットをデータをもとに解説してもらおう。
参考:野球選手がトレーニングをする必要はあるのか?

目次:野球選手にとって体力トレーニングをするべき3つの理由とは?
体力トレーニングは怪我のリスクが少ない?
効率的に体力アップできる!
その上最大限に体力アップできる!

野球の練習だけでは、野球選手に必要な体力を十分に向上することが難しいので、足りないことを補うために、体力トレーニングをする必要がある。では、具体的に野球の練習とは別に体力トレーニングをするメリットについて考えてみたい。
単純に言えば、そのメリットは「体力向上」である。しかし、野球の練習だけでは体力が一切向上しないのかというと、必ずしもそういうわけではない。たとえば、高校球児のような若い選手の場合、野球の練習をするだけでも身体にとっては十分な刺激となり、体力が向上する可能性がある。
「それなら、野球の練習だけやっていればいいじゃないか」「体力トレーニングなんて必要ないじゃないか」と思われるかもしれない。しかし、野球の練習とは別に体力トレーニングを実施することには、それなりにプラスのメリットがある。それは、「より健康的に・より効率よく・より最大限に」体力を向上できることなのだ。

怪我のリスクを抑えながら体力を向上できる

「体力トレーニング」と聞くと、「身体に悪そう」という印象を持たれるかもしれない。たとえば、「ウエイトトレーニングをやったら肩や腰を痛める!」という主旨の発言を耳にしたことは一度や二度ではない。では、実際に体力トレーニングはケガのリスクが高いのだろうか?
ケガの発生率を調べた論文を読んでみると、ウエイトトレーニングにおけるケガの発生率は1000時間あたり0.035回と報告されている(1)。一方、野球におけるケガの発生率は、高校生で0.95回(2)、大学生で5.83回(3)、プロでは膝のケガだけで1.2回(4)とする報告がある。
これらのデータは、複数の異なる論文から集めたものなので、単純に比較するには注意が必要だ。しかし、それを考慮に入れても、ウエイトトレーニングについては、野球をプレーするのと比べると、ケガのリスクがだいぶ低いことがわかるはずだ。
つまり、たとえ、野球の練習をするのと体力トレーニングをするので体力向上効果がまったく同じだったとしても、体力トレーニングをうまく活用したほうが、ケガのリスクを低く抑えながら(=より健康的に)、同じだけの体力向上を達成できるということなのだ。

効率的に体力を向上できる

たとえば、筋力を増やしたいと考えている野球選手がいるとする。野球の練習をやっていれば、体力トレーニングは一切しなくても、ある程度は筋力もつくだろう。しかし、野球の練習とは別にウエイトトレーニングを実施すれば、それと同じだけの筋力向上を、より短期間で(例:6ヶ月 vs. 2ヶ月)、あるいは、より少ない時間投資で(例:週に10時間 vs. 3時間)達成することが可能なのだ。
つまり、筋力向上という目的を達成するための手段としては、野球の練習よりもウエイトトレーニングのほうが、はるかに効率がよいのだ。ここで言う「効率がよい」とは、より少ない時間とエネルギーの投資で目的を達成できるという意味である。
野球選手が現役でいられる期間は限られている。そして、練習や体力トレーニングに使える時間やエネルギーも限られている。そうであるならば、より効率的に体力を向上することができる体力トレーニングを活用しない手はないだろう。

さらに最大限に体力を向上できる

上述したように、野球の練習だけをやっていても、ある程度は体力を向上させることは可能だ。しかし、それだけで向上させることのできる体力レベルはたかが知れている。たとえば、野球の練習だけをやっていても、ある程度は筋力を向上することは可能だ。しかし、それに加えてウエイトトレーニングを実施したほうが、はるかに高いレベルにまで筋力を伸ばすことができる。
つまり、「ある程度」のレベルを超えて、より最大限に体力を伸ばすためには、野球の練習だけでは不十分なのだ。そこで、野球の練習とは別に体力トレーニングを実施するメリットが出てくるわけなのである。

今回は体力トレーニングをすることのメリットについて整理した。次回は、アスリートにとって体力トレーニングの役割とは何なのか?ということについて具体的に考えていく。

河森直紀(かわもりなおき)
ストレングス&コンディショニングコーチ。ブロガー。セミナー講師。コンサルタント。アメリカとオーストラリアの大学院に留学、博士号を取得。国立スポーツ科学センターのトレーニング指導員として日本代表アスリート(フェンシング、自転車、スキークロスカントリー、スキージャンプ、etc)のS&C指導を担当。2017年にフリーランスのS&Cコーチとして独立。
【河森氏のブログはこちら】http://kawamorinaoki.jp/

引用:
(1).Hamill BP. Relative safety of weightlifting and weight training. J Strength Cond Res 8: 53-57, 1994.
(2).Knowles SB, Marshall SW, Bowling JM, Loomis D, Millikan R, Yang J, Weaver NL, Kalsbeek W, and Mueller FO. A prospective study of injury incidence among North Carolina high school athletes. Am J Epidemiol 164: 1209-1221, 2006.
(3).McFarland EG and Wasik M. Epidemiology of collegiate baseball injuries. Clin J Sport Med 8: 10-13, 1998.
(4).Dahm DL, Curriero FC, Camp CL, Brophy RH, Leo T, Meister K, Paletta GA, Steubs JA, Mandelbaum BR, and Pollack KM. Epidemiology and Impact of Knee Injuries in Major and Minor League Baseball Players. Am J Orthop (Belle Mead NJ) 45: E54-62, 2016.

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