野球選手がトレーニングをする必要はあるのか?

Baseball Geeksではこれまで「野球×データ」をテーマに新たな野球の見方を提案してきた。従来の指導方法や当たり前だと思ってきた野球の常識を、データを使って再検証し「野球の真実」を明らかにするためだ。
最近では、スタットキャストの発展により球速や打球速度の有効性が明らかとなり、それらを高めるために筋力アップに取り組む選手が増えてきている。他のスポーツにおいても、体力トレーニングはパフォーマンスの向上や怪我の予防に必要不可欠で、多くのアスリートが取り組んでいる。
今回のBaseball Geeksは、ストレングス&コンディショニングコーチの河森直紀氏と共に野球選手にとってなぜ体力トレーニングがなぜ必要なのかを考えていきたい。

目次:野球選手がトレーニングをする必要はあるのか
野球の練習以外に体力トレーニングをするべきなの?
体力トレーニングって何のためにするの?
野球の体力特性を考えてみよう!
野球の練習以外に体力トレーニングをする必要はるのか?
写真はhttps://pxhere.comより

ブルペンでの投球やトスバッティングのような野球の練習以外のことは一切しないという野球選手は少数派だろう。特に、競技レベルが上がるほど、練習以外にもウェイトトレーニングやインターバル走のような体力トレーニングを実施するのが当たり前になっているはずだ。しかし、本当に野球の練習をするだけではダメなのか、練習以外に体力トレーニングを実施しないといけないのか、という点について、突き詰めて考えたことのある選手や指導者はどれほどいるだろうか。

体力トレーニングって何のためにするの?

究極的には、野球の練習だけで、野球に必要な体力を十分に高めることができるのであれば、練習以外に体力トレーニングを実施する必要はない。ただし、現実的には体力トレーニングを一切やらない選手は少ない。裏を返せば、野球選手の多くは、野球に必要な体力を高めるためには、練習をするだけでは足りないと感じていて、プラスアルファとして体力トレーニングに取り組んでいるということだ。
つまり、野球の練習だけではできない(足りない)ことを、一度練習から離れて、あえて練習とは別に実施する必要がある。それが体力トレーニングなのだ。体力トレーニングでは、野球の練習とは「異なる」ことをやることに意味がある
この点をしっかり理解しておかないと、体力トレーニングのやり方を間違ってしまう恐れがある。たとえば、ウエイトトレーニングの効果を野球のパフォーマンスに直接繋げたいとの想いから、ウエイトトレーニングの動きを野球の動きに近づけてしまう人がいる。そういう動きは「野球に特異的なエクササイズ」と呼ばれたりする。そのようなやり方は、一見、理屈が通っているような気もするのだが、体力トレーニングの本質から考えるとナンセンスである。

野球の練習だけでは足りないことを補うのが体力トレーニング

すでに説明したとおり、野球の練習だけでは足りないことを補うために、野球の練習とは異なることを実施しようというのが体力トレーニングの本質だ。それにもかかわらず、体力トレーニングを野球の動きに近づけるのは、これに逆行する行為であり、理屈に合わない。「野球の動きに近いのが良い体力トレーニングである」という考えを突き詰めると、野球の練習そのものが最も効果的ということになってしまう。
しかし、そもそも野球の練習だけでは足りないから、プラスアルファとして体力トレーニングをやっているわけなので、矛盾が生じるのだ。そのような間違ったやり方を避けるためにも、そもそも野球選手はなぜ体力トレーニングをやるのか?という点を突き詰めて考えておくことが大切だ。

野球の体力特性を理解しよう

ただし、野球の練習とは「異なる」ことを実施するのが体力トレーニングの本質だからといって、異なっていれば何でも良いのかというと、そういうわけではない。野球の動きを観察し、どのような体力要素が野球に必要なのかを分析したうえで、その体力要素を向上するのに最適な体力トレーニングの方法を選択するのが大切なのだ。
たとえば、野球における走る・打つ・投げる等の動きにおいては、共通して股関節伸展の筋力が重要であると分析したのであれば、股関節伸展の筋力を高めるのに最適な体力トレーニング手法を選んで実施すればいいのだ。

ここでのポイントは、野球のことは一度忘れて「股関節伸展の筋力を高める」ことにフォーカスし、それを達成するのに最適な手段を選択するということだ。そのトレーニングが野球の動きに似ているかどうかは関係ない。そのような思考にもとづき選択された体力トレーニング手法は、結果として、野球とは「異なる」ものになっているはずだ。
「なぜ野球選手が体力トレーニングをやるのか?」という基本的なことを、一度立ち止まって考える機会をぜひとも作ってみてほしい。
参考:打者は体が大きい方が有利!?データで検証!

河森直紀(かわもりなおき)
ストレングス&コンディショニングコーチ。ブロガー。セミナー講師。コンサルタント。アメリカとオーストラリアの大学院に留学、博士号を取得。国立スポーツ科学センターのトレーニング指導員として日本代表アスリート(フェンシング、自転車、スキークロスカントリー、スキージャンプ、etc)のS&C指導を担当。2017年にフリーランスのS&Cコーチとして独立。
【河森氏のブログはこちら】http://kawamorinaoki.jp/

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