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高校野球

【甲子園特集】解説者・前田正治氏が語る!高校野球の今と昔(前編)



目次
高校野球を見続けてきた20年
今と昔、高校球児はどう変化してきているのか
甲子園は今も昔も球児の目標

高校野球を見続けてきた20年

Baseball Geeksがお届けするこの夏の連載「Baseball Geeks×甲子園 ~高校球児の今と昔、そして未来~」。第1弾の今回は、高校野球中継で約20年間解説を担当され、長年にわたって高校球児のプレーを見続けてこられた、日本新薬硬式野球部元監督の前田正治氏に話を聞いた。

インタビューに笑顔で答える前田正治氏
前田 正治(まえだ まさはる)

大阪明星高校、関西大学で投手として活躍。日本新薬野球部では都市対抗、日本選手権の舞台で活躍。その後、日本新薬野球部の監督として都市対抗ベスト4進出。平成14年よりNHKの高校野球の解説者。平成23年より秋田県高校野球強化プロジェクトアドバイザーを務める。

今と昔、高校球児はどう変化してきているのか

―前田さんは平成14年から、約20年間甲子園の解説をされていますね。高校野球は特にここ数年で大きく変化してきていると思います。具体的にどのようなことが変化したのでしょう。

前田:まず、体格や技術的な部分、特にバッティングのレベルは明らかに上がっています。これは筋力トレーニングの一般化、ピッチングマシンの高性能化、ネットやケージなどの普及で練習環境が昔とは全く違うというところが背景としてあるのではないでしょうか。
また、食育を含めた効率の良い体づくりにも力を入れている学校が多いので、昔よりも体の大きな選手が増えているのは言うまでもありません。

前田:毎年甲子園に出るようなチームは、夏休みはほぼ毎日試合をすることが当たり前になっています。実戦を多く行っているので、特にバッターなんかはたくさん打つ練習ができますし、色々なピッチャーを見る事ができるので、当たり前に成長していっているのだと思います。
ただし、体格は昔より大きくなっていますが、体力はむしろ低下しているのではないでしょうか。自分自身の身体を操作する能力は、かつてと比べ低下しているような印象がありますね。

―バッターの技術で言うと、かつての主流だったダウンスイングからレベルスイングになり、現在はアッパー気味のスイングが流行しているように思います。前田さんから見て、バッティングの技術はどう変化してきていますか。

前田:上から叩くようなスイングは、徐々に減っていると思います。金属バットですし、体格も大きくなってきたので、レベルスイングでバットを押し出せばボールは飛びます。手首を返したり上から叩く必要がありません。レベルスイングで振るという指導も当たり前になって来ましたし、フライボール革命も普及してきましたよね
データ分析のおかげで、フライを打つことのメリットやボールが飛ぶ角度も分かってきたということが影響して、打撃理論も変わってきているのではないでしょうか。

ピッチャーの技術は落ちている?!

前田ピッチャーの技術に関しては、平行線、もしくは下がり気味と言っても良いかもしれません。あまりにも情報が多すぎて、指導者がそれを取捨選択して上手く使えていない、偏った指導しかできないという背景があるのかと思います。
また、球種は増えてはいますが、沢山の球種を覚えることで逆に上手く活用できていない選手もいるのではないかと思います。

―150km/hを超える投手も続々誕生するなど、球速は以前よりも増しています。でも、投手の技術は下がっている、と。投球術という部分で技術の低下を感じるということでしょうか。

前田:そうですね。「どういう風に投げるか」というところが練習の中心にあって、自分が良いボールを投げる事にこだわりすぎていると思います。ピッチャーが一番考えなければいけないことは、バッターを抑えることですからね。今のピッチャーは、バッターを抑えるという観点が不足しているのではないかと感じます。

―バッターを打ち取るということが本来の仕事であるにも関わらず、球速を高めたり球種を増やすことばかりに気を取られて、打者を観察するとか、反応を見るという部分が欠如してきている。打者を打ち取るという部分から逆算して練習していく必要があるということですね。

前田:それを選手自身も感じていない気がしています。ど真ん中に投げたボールをバッターが見逃したとします。この投球に対してキャッチャーが「もっと良いコースに投げろ」と言い、それに対して謝っているピッチャーがいます。これはよく目にする光景ではありますが、全然ダメですね。真ん中であっても、バッターが見逃せばピッチャーは勝ちなんです。素晴らしいボールでも、ボールと言われたら結局ボール球ですから。

―今はテクノロジーが進歩して、プレーの見える化はされましたが、まだ打者目線での活用が進んでいない。データがない時代では、野球の構造を感覚的に理解していて、打者を抑えるための工夫してきた選手が多かったということなのですね。

甲子園は今も昔も球児の目標

―部員数の減少によって、1校だけでチームを構成できない状況が増えてきたり、逆に非常に能力の高い中学生が、甲子園にいけるような強豪校に進学することが当たり前になっています。この流れや取り組み方というのは20年前とどう変化していますか。

前田:私は秋田県に指導しに行くことがあります。色々なチームに行かせてもらいましたが、甲子園を目指している選手は多い。今は他にも色々なスポーツもあって選択肢は多くなっていますが、取り組み方自体はそう昔と変わっていないのかなと思います。
脚注:前田氏は、秋田県高校野球強化プロジェクトのアドバイザーを務める。

―甲子園の舞台を目指すということは今と昔であまり変わらないんですね。他の部活動と違って、予選からテレビやネット中継があります。今は色々なスポーツがある中でも、やっぱり高校野球は花型ですよね。友達や家族、親戚も応援してくれますし、選手のモチベーションは上がるというのは今も昔も変わらないのでしょうね。

前田:巷では、少子化によって野球人口が少なくなってきたという話や、それによる野球衰退論みたいなものも出てきていますよね。
実際、少子化というのは野球人口減少の要因だとは思いますが、昔と比べて今は色々なスポーツができるという選択肢があるので仕方のないことだと思います。昔と今で野球が変わってしまったとか、高校生の取り組み方事体をあまり比べてほしくないですね。

次回、後編へ続く
【甲子園特集】解説者・前田正治氏が語る!高校野球の今と昔(後編)

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Baseball Geeks編集部