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MLB

サイ・ヤング賞最有力バウアーを分析!驚異の奪三振能力が武器



目次
4シームを軸に多彩な球種で打者を翻弄
メジャー平均から逸脱するボールで三振を量産
抜群の防御率でサイ・ヤング賞受賞なるか

メジャーリーグ(以下、メジャー)の投手にとって、最も権威のある「サイ・ヤング賞」。ナ・リーグでは、ダルビッシュ有(カブス)が日本人投手初となる受賞の可能性があり、大きな注目を集めていることは皆さんもご存知だろう。
参考:サイ・ヤング賞受賞なるか!ダルビッシュ有の大躍進の秘訣に迫る!

その中で、サイ・ヤング賞最有力候補と評されているのがトレバー・バウアー(レッズ)だ。今シーズンのバウアーは勝ち星こそ伸びなかったものの、防御率1.73で自身初の最優秀防御率のタイトルに輝いた。安定感抜群の好投手がダルビッシュのサイ・ヤング賞受賞を阻止するのか。今回は、今シーズンのトラッキングデータからバウアーの投球を分析していく。

4シームを軸に多彩な球種で打者を翻弄

まず初めに、各球種の球速と投球割合についてみていく(表1)。
4シームはメジャー平均程度の球速であるが、全体の投球割合の内の4割を占めており投球の軸となっている。その他にカットボール・スライダー・ナックルカーブがそれぞれ均等に投げ分けられており、複数の球種を巧みに投げ分けることで打者に球種を絞らせない投球をしているといえる

また、バウアーが主に投球する変化球はメジャー平均を大きく下回る低速なボールばかりである。いわゆる緩急を使った投球を意識しているのかもしれない。

表1 各球種の球速と投球割合。カッコ内はメジャー平均

メジャー平均から逸脱するボールで三振を量産

打者の予想を裏切るボール変化量

続いて、各球種のボール変化量についてみていこう(図1、表2)。
最も投球割合が高い4シームは、ホップ成分がメジャー平均よりも約10センチも大きく、メジャー屈指の「ノビる」ボールである。ホップ成分の大きい4シームは空振りを奪いやすいことがわかっており、実際にバウアーが今シーズンに奪った100個の三振のうち、4シームによる三振が42個と高い奪三振能力を示していた。空振りを奪いやすい4シームがバウアー最大の武器といってもいいかもしれない。
参考:ホップ成分が大きい速球は空振りを奪いやすいって本当!?

図1 各球種のボール変化量。4シームのホップ成分が非常に大きい

また、比較的投球割合の高いスライダーやナックルカーブの変化量をみても、メジャー平均から大きく逸脱していることがわかる(表2)。打者にとって、メジャー平均の変化量のボールは、いわゆる見慣れているボールである。一方、打者の予想に反した変化をみせるボールを捉えることは非常に困難である。メジャー平均から大きく外れたボールを満遍なく投球することによって、打者を翻弄していることがわかる。
参考:メジャーリーガーの平均的なボールって?

表2 各球種の球速比とボール変化量。メジャー平均から外れた変化量を誇る

高い完全アウト率を誇るリスク管理能力

ここで、投手の能力を評価するうえで重要となるリスク管理能力についてみていこう。投手が打者と対戦することで、奪三振・内野フライ・ゴロ・外野フライ・ライナー・四死球・本塁打のいずれかのイベントが発生する。そして、これらのイベントによってそれぞれアウトになる確率が異なっている。
参考:奪三振の重要性とは!勝てる投手のリスク管理能力を分析

図2 バウアーのリスク管理表。完全アウトの割合が非常に高い

ここで、バウアーのリスク管理能力をみてみたい(図2)。バウアーのリスク管理能力をみると、メジャー平均と比較して完全アウト(奪三振+内野フライ)の割合が非常に高く、四死球および本塁打の割合が低いことがわかる。奪三振はほぼ100%アウトを奪うことができ、失点のリスクが低いといえる。一方、四死球や本塁打は攻撃が継続され、本塁打に関しては必ず失点が生じてしまう。この非常に優れたリスク管理能力が、ナ・リーグ唯一の防御率1点台を記録した要因の一つであるといえるだろう。

抜群の防御率でサイ・ヤング賞受賞なるか

今回は、トラッキングデータから今シーズンのバウアーの投球を分析してきた。自身初となるタイトルを獲得したバウアー。シーズン終盤には好投を続け、見事チームをプレーオフへと導く活躍をみせた。今シーズンは例年にも増してサイ・ヤング賞争いが混戦となっている。タイトル奪取の勢いのままにサイ・ヤング賞受賞となるのだろうか。発表が待ち遠しいばかりだ。

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Baseball Geeks編集部