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MLB

サイ・ヤング賞候補アルカンタラを分析!総合力の高いイニングイーター



目次
4シームの平均球速は約158キロ
抜群のリスク管理能力を発揮
メジャー屈指の鉄腕が受賞なるか

メジャーリーグ(以下、メジャー)の投手にとって、最も権威のある「サイ・ヤング賞」。今シーズンのサイ・ヤング賞は、日本時間11月17日に発表される。今回は、ナ・リーグで最有力とされているサンディ・アルカンタラ(マーリンズ)の投球を、今シーズンのトラッキングデータから分析していく。
参考:サイ・ヤング賞候補ウリアスを分析!緩急を生かした投球で受賞なるか

4シームの平均球速は約158キロ

まず、各球種の球速と投球割合についてみていく(表1)。
4シームや2シームといった速球系の球種は、平均球速が157キロとメジャーの中でもかなり高速だ。その他の変化球もメジャー平均と比べて10キロほど球速が速く、パワーで押していくタイプの投手といえる。4シームの球速は速ければ速いほど空振り割合が高まる。このことからも、メジャー平均を大きく上回る高速なボールは、アルカンタラの大きな武器の一つであることがわかる。
参考:【2021年】球速アップのメリットとは?データからその重要性を再確認!

投球割合をみると、4シーム・2シーム・スライダー・チェンジアップの4球種を非常にバランスよく投げ込んでいることがわかる。4シームを主体とする投手が多い中で、打者に球種を絞らせない投球をしていることが、リーグ2位の防御率を記録した大きな要因の一つといえるだろう。
参考:【2021年】4シームはリスクが高い?最新データから球種別の特性を探る

表1 球種別の球速と投球割合。カッコ内はメジャー平均

続いて、各球種のボール変化量についてみていく(図1)。
全ての球種がシュート気味であるのが、アルカンタラの最大の特徴だろう。4シームはホップ成分が小さい「やや垂れる」ボールであり、球質としては空振りを奪うというよりはゴロを打たせるのに適しているといえる。また、2シームも打者の手元で小さく動くボールであるため、芯を外してゴロを打たせたい場面で有効だろう。球速も4シームに非常に近く、ピッチトンネルを構成しやすいボールであるといえる。

図1 アルカンタラの今シーズンのボール変化量

一方、チェンジアップはメジャー平均よりも高速に大きく落ちる球質であり、非常に空振りを奪いやすいボールだ。また、スライダーはメジャー平均よりスライド成分がやや小さいが、高速かつ4シームとの横変化の差分が大きいため、打者は「大きく曲がっているように感じる」だろう。

抜群のリスク管理能力を発揮

ここで、リスク管理表をみてみよう(図2)。
ゴロの割合がメジャー平均を大きく上回っており、完全アウトの割合もメジャー平均以上である。主に2シームでゴロを量産して失点のリスクを下げ、変化球で三振を奪うことができる。失点リスクの低い代表的な投手といえる。また、四死球割合もメジャー平均よりも低く、クオリティースタート率は75%を誇る。この投球スタイルと制球力の良さが、リーグ最多の228.2回を投げて完投6試合(うち完封1試合)と、安定して長いイニングを投げることができる秘訣だろう。

図2 アルカンタラのリスク管理表

最後に、空振りを奪ったチェンジアップとスライダーの到達位置を見てみよう(図3・4)。
チェンジアップは左打者の外角低め、スライダーは右打者の外角低めに制球されている。4シームも徹底して高めに投球されており、高めの速球と低めの変化球をうまく組み合わせることで、空振りを奪うことができているのだろう

図3 アルカンタラの空振りを奪ったスライダーの到達位置
図4 アルカンタラの空振りを奪ったチェンジアップの到達位置

メジャー屈指の鉄腕が受賞なるか

今回は、トラッキングデータから今シーズンのアルカンタラの投球を分析してきた。今シーズンのアルカンタラは先発として14勝を挙げ、リーグ2位となる防御率2.28を記録した。近年の投手分業制の中では珍しい鉄腕が、サイ・ヤング賞のタイトル獲得となるのか注目だ。

サンディ・アルカンタラ

Sandy Alcantara
1995年9月7日生まれ 右投右打
カージナルス(2017)ーマーリンズ(2018-)
【MLB通算】118試合 34勝43敗 防御率3.10

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Baseball Geeks編集部