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MLB

岩隈久志2017年分析 ~復活までの道のり~



目次
球種毎の球速と投球割合
岩隈久志 球種毎の回転数とボール変化量
魔球スプリットは健在
2018年復活のカギとは!

キーワード:メジャーリーグ、トラックマン、岩隈久志、2017、2018、球種、球速、回転数、変化量

2017年の最終成績は0勝2敗。5月3日の登板を最後に、岩隈久志(以下、岩隈投手)のメジャーリーグ挑戦6年目は終わった。

2017年はシーズン終了を待たずして右肩を手術。
シーズンオフにはFAとなったが、シアトル・マリナーズと再契約。2018年は5、6月ごろの復帰を目指している。

日米で積み重ねた勝利数は170。200勝も視野に入る右腕の復活を待つファンも多い。
そこで今回は、岩隈投手の2017年の投球を振り返るとともに、2018年の復活のヒントを探っていきたい。

球種毎の球速と投球割合

まずは2017年の岩隈投手の球種毎の球速と投球割合をみていく(表1)。

表1 球種毎の球速と投球割合
球種平均球速
(km/h)
平均球速
(%)
投球割合
(%)
4シーム138
(143)
100
(100)
23
(19)
2シーム137
(142)
100
(99)
18
(26)
カットボール128
(139)
93
(97)
32
(5)
スプリット130
(135)
94
(94)
20
(18)
カーブ111
(115)
81
(80)
7
(9)
(スライダー)(132)(93)(22)

カッコ内は2016年の岩隈投手

多くの投手が投球の中心とする4シームの投球割合は23%と低く(メジャーリーグ平均36%)、カットボールやスプリットといった変化球が投球の中心となっている。

2016年(カッコ内)と比較して最も変化したのがスライダーの投球割合だ。投球の3割近くを占めていたのが、全く投球されなくなっている。2017年は代わりにカットボールを32%投球しており、むしろ「スライダーをなくしてカットボールにした」と言った方が正しいかもしれない。
参考:岩隈久志投手2016シーズン分析

全球種の球速が大きく低下

球速に注目すると、4シームの球速は平均138km/hとメジャーリーグ平均(150km/h)を大きく下回る。
さらに2017年は2016年よりも全球種で球速が低下している。

そこで、2017年に投球割合の高かった3球種の球速を、登板日毎にみてみる(図1)。

図1 登板毎の球速の推移

2017年は、登板した全試合で2016年の平均球速を下回った。
この推移をみると、2017年はコンディションが悪く、離脱前からすでに投球に悪い影響を与えていたのであろうと推察できる。

岩隈久志 球種毎の回転数とボール変化量

続いて岩隈投手のボール変化量を2016年と比べてみていく【図2、3】。
岩隈投手のボールはサイドスロー投手のような特徴になっている。
4シームや2シームはホップ成分の小さな「沈む球質」であるものの、カットボールやカーブはスライド成分が大きい「横滑りの球質」なのだ。
参考:「ダルビッシュ、田中将大、上原浩治のストレートは変化球?」データで分析

図2 2016年のボール変化量
図3 2017年のボール変化量

2017年は球数こそ少ないものの、それぞれの球種の傾向は類似していた。以前のコラムでも紹介したように、岩隈投手は同一球種でも打者を見ながら変化を微妙に変える術を持っている。4シームや2シームの沈む球質も相まって、ゴロを打たせる技術は非常に高いだろう。
参考:岩隈久志「日本人投手の”道標”」

横曲がりの減少、特徴活かせずか

一方で、スライド成分の大きなスライダー(図2中黄色)を無くしたことで、他のボールにも影響を与えたのかもしれない。2017年はスライダーの代わりにカットボールを多投しているものの、カットボールは横の変化が小さく、岩隈投手独特の「サイドスロー型」の特徴を消してしまったのだろう。

魔球スプリットは健在

しかしネガティブな要素ばかりではない。
ここでスプリットの変化量に注目していただきたい。
ホップ成分の平均値は13cmだったが、図3では一部のスプリットが原点より右下にプロットされている。

これは以前田中将大投手のスプリットの際に紹介したが、「メジャーリーグで0.2%しか投球されない魔球」なのだ。
通常スプリットはバックスピンしていることがほとんどである。しかし、岩隈投手や田中投手はトップスピンのかかったスプリットも投球しているため、非常に落差が大きい。
打者はほとんど見たことのないボールであり、このスプリットは2018年も威力を発揮するだろう。
参考:田中将大2017年分析 ~0.2%の魔球~

2018年復活のカギとは!

最後に,2018年復活のポイントを考える。
ここまでの分析結果を踏まえてポイントを3つ挙げてみる。

球速の低下は、4シームだけでなく他の変化球にも悪影響を及ぼす。ベテランの岩隈投手にとって球速の向上は容易ではないが、右肩の不安が無くなれば、再び以前の水準に戻すことも難しくないだろう。

スライダーを無くした理由は、右肩の不調が影響を与えたか、もしくは、岩隈投手自身が効果的でないと感じているのかも知れない。
右肩の不安であれば、球速同様にコンディション次第であろう。
効果的でないと感じるのであれば、投球パターンを変えても良いかもしれない。スライド成分の大きなスライダーは、ボール球からストライクに入るボールとしても有効だろう。つまり、決め球ではなく、カウントを整える役割でのみの投球でも十分効果的なのではないだろうか。

コンディションも含めて他の方策が難しい場合は、スプリットを増やすという方策もある。一般的にスプリットは他のボールと組み合わせる事で威力を増すが、ボールそのものに特徴を持つ岩隈投手の場合、スプリット単独でも十分勝負できるだろう。2017年もスプリットが増加していたが、岩隈投手自身すでにこの方策を取っていたのかもしれない。

2017年は、故障後一度は復帰予定が決まるも、違和感がぬぐえず復帰には至らなかった。チームは早期の復帰を期待するが、焦らずに再び本来のパフォーマンスを取り戻してほしい。

Baseball Geeks編集部は、完全復活した岩隈投手の投球を多くのファンと共に待ち望んでいる。

※本稿でのボール変化量は球場毎の誤差を独自に補正

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Baseball Geeks編集部