真っ向勝負は時代遅れ?球種別のイベントの特徴!

「真っ向勝負」と聞くとどんなイメージを思い浮かべるでしょう?

『藤川さんとカブレラの真っ向勝負は、今でも印象に残っています。全球真っすぐを宣言して投げるところに、プロのすごさを感じました』※日刊スポーツ2016年6月28日紙面から

オールスターの思い出としてジャイアンツ坂本選手も振り返るように、ストレート(本項では4シーム)で真っ向勝負する姿に「美学」を感じている方は少なくないのではないでしょうか。

今回は、イベントについてリスクという観点から、この4シームについて意外な事実を紹介したいと思います。
参考:イベントのリスクからみる野球の本質

万国共通!投球の中心は4シーム

イベントのリスクを考えるうえで、4シームがどの程度投球されているのかをみてみます。2016年の全投球から、イベントが発生した約33万球を球種別に分類しました【図1】。

図1 MLB2016年の球種別投球割合

図1をみると、4シームは36%と最も投球割合が多い球種となっています。
日本で4シームは投球の中心となっていますが、MLBでもやはり4シームは投球の中心であるといえます。

最も打たれるのは4シーム?

ここでイベントのリスクの考え方を紹介します。
打者がスイングを行うことで、イベントは発生します。イベントは空振り、ファール、そしてゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライのどれかに分けることが出来ます。

イベントごとにリスクを考えた場合、もっともリスクが低いのは空振りです。前回、打球毎のイベント発生割合をみてみましたが、ゴロはフライやライナーと比べて長打の可能性が圧倒的に低く、リスクが低いということとなります。

では、球種別にイベントの発生割合はどのように変化するのでしょうか。
2016年に投球されたうち、イベントが発生した約33万球を分析しました【表1】。

表1 球種別のイベント発生割合
球種空振り/
スイング
内野
フライ
ゴロ外野フライ
+ライナー
ファール
4シーム16%3%14%20%47%
2シーム13%2%25%20%40%
スライダー33%3%16%16%33%
チェンジアップ30%2%19%17%31%
カーブ31%2%19%16%32%
カットボール22%3%18%18%39%
スプリット32%2%19%14%32%
ナックル25%4%17%19%36%

表1をみると、最も空振りを多く奪っているのはスライダーでした。一方で4シーム、2シームは空振り割合がスライダーの半分以下なのです。

特に4シームは空振りやゴロが少なく、外野フライとライナーが多いというリスクが最も高いボールとなってしまっているのです。

では次に球種別の打球特性をみてみます。

表2 球種別打球特性
球種平均打球速度
(km/h)
平均打球角度
(°)
平均飛距離
(m)
4シーム142.915.658.3
2シーム143.15.646.8
スライダー138.711.451.9
チェンジアップ137.88.649.2
カーブ139.28.548.8
カットボール138.611.351.1
スプリット139.66.645.7
ナックル140.012.052.7

4シームは飛距離が圧倒的に大きい球種となってしまっています。つまり、残念ながらここでも4シームは、最もリスクが高い球種といえるのです。

なんということでしょう。
4シームは、投球の一番の基本といわれ、4シームで勝負しろと言われ続けた投手も多くいることでしょう(私自身も、指導者には口を開けばストレートストレートと言われ続けました。)。

投球割合も多く、投球の中心でもある4シームは、実は最も打たれやすい球種だったのです。
これは意外かつ残念な結果に感じる方も多いのではないでしょうか。

4シームの時代はもう来ないのか

本項では、4シームは最も打たれやすいボールであるという結果となりました。
4シームはもう廃れてしまうのでしょうか?

そんなことはありません。近年ではフライボールレボリューション※が起こり、打球を持ち上げるような打撃が流行をみせています。アッパースイングの打者が増加すると、スライダーやスプリットといった落ちる変化球は以前のように空振りを奪えなくなるでしょう。

※トラッキングデータの普及でフライ打球の有効性が明らかとなり、打者がフライ打球を増やそうとしている取り組み。

そして逆に、4シームに弱点を持つ打者が増加するかもしれません。すでに高めの4シームを武器に活躍している上原投手のような例もあります。
参考:上原浩治「日本球界に”新常識”を!」

すなわち打者の方策が変わるにつれて、4シームのトレンドは再びやってくると思われます。データの普及により、有効なボールは常に変わっていくのです。

野球の本当の魅力とは

データの普及は野球に大きな影響を与えました。取得された多くのデータは、選手や球団が勝利のために活用するだけでなく、ファンの方自身がデータを通じて楽しむ新しいツールにもなりつつあります。

しかし、決してデータの一側面だけみる「頭でっかち」になってはいけません。データはあくまでも野球の魅力を抽出したり、手助けするための手段であり、データが主役になってはならないのです。

MLBに遅れを取りながら、日本でも少しずつ野球のデータ活用が広がってきています。データによって野球の魅力がさらに増え、新たな「美学」と出会えることを楽しみにしたいと思います。

※本項表2の打球データに誤りがあったため、訂正いたしました。(2017年11月20日)

Baseball Geeks編集部

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