イベントのリスクからみる野球の本質

『巨人阿部2000本安打達成』
偉業達成を讃える記事が、連日紙面を賑わしています。
それら報道の中で驚くべきことがあります。

それは「2000本」という記録がどんな意味を持つか多くの人に認識されていることです。野球が多くの人に親しまれている証拠であり、記録や指標は野球にとって大きな役割を担っているのです。

記録や指標の活用方法

野球は記録や指標で楽しみやすいスポーツだと言われています。
ファンの中でも「記録マニア」のような方が存在したり、「セイバーメトリクス」を題材とした映画が人気を博したりしています。

記録や指標を使って「説明」と「予測」を行うことができます。
『筒香は去年本塁打王を取った強打者だ。』や、
『菅野は防御率が1点台だから20勝するかもしれない。』のように、この選手はどんな選手か「説明」し、どんな結果を残すか「予測」するのです。

しかし、記録や指標には偶発性や運の要素が含まれています。
たとえば打率は、たまたま野手のいない場所や能力の低い選手が守っている位置に打球が多く飛んだだけでも、好成績になってしまいます。

今回は打撃結果から、何気なく使われている記録や指標をより深く掘り下げていき、野球の本質を探っていきたいと思います。

イベントのリスクを考える

打撃結果を深く考えるうえで、安打のような「結果」だけでなく、どんな打球といった「過程」をみると、興味深い成績が見えてきます。

2016年のMLBの全打球(約12万球)を打球の種類毎にまとめました【表1】。
このような打球の種類に加え、空振り、ファールを含む打者がスイングした時に起こる場面をイベントと呼びます。

表1 MLB2016年の全打球の種類と成績
イベント発生割合安打割合長打割合本塁打割合長打率
ライナー26%65%25%6%1.038
外野フライ21%22%19%14%.687
ゴロ46%25%2%0%.265
内野フライ7%2%1%0%.027

表1をみるとわかるように、ゴロは最もイベントの発生割合が高いものの、長打になる確率はわずか2%と、決して良い打球であるとは言えません。

同時に、ライナーや外野フライは、長打や本塁打になる可能性を多く含むイベントであることがわかります。
今日MLBで旋風を巻き起こしている「フライボールレボリューション」にはこのような裏付けがあり、長打や本塁打の可能性を広げようとする方法なのです。
参考:加速するフライボールレボリューション

また、空振りは打球が発生しませんので、安打確率も長打確率も0%です。空振りを奪い続けることが出来れば、運の要素もなく、打者を打ち取っていく事が出来ます。

より明快に「説明」や「予測」を行う

繰り返すようですが、記録、指標には偶発性、運の要素が含まれています。ですが、「過程」を説明することで、より明快に「説明」「予測」が出来るのです。

例えば、冒頭で紹介した文章に、これらの情報を加えるだけでぐっと精度が高まるのです。
『去年本塁打王を取っただけでなく、ライナー打球も多いため首位打者も狙える打者だ。』や、
『防御率が1点台かつ、ゴロを多く打たせることが出来るから安定して勝ち星をマークするかもしれない。』のようになります。

これらのように、このイベントがどのような意味を持つか知るだけで、より野球を楽しめるのではないでしょうか。

次回は、このイベントをさらに掘り下げて、従来の指導を覆す意外な新事実を紹介します。

Baseball Geeks編集部

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