電撃復帰!上原浩治は巨人の救世主となるのか!「打たれない」140キロの秘密をトラックマンデータで徹底解析!

キーワード:上原浩治、2018、読売、ジャイアンツ、球種、変化球、球速、回転数、変化量、データ

上原浩治投手(以下、敬称略)の加入は、V奪還を狙う巨人にとって大きな力となる

上原浩治は10年ぶりの日本球界復帰を決断した。FA市場が遅れ、シーズン前ギリギリの入団となった。
先発、中継ぎ、抑えをすべて経験し、世界一にも輝いたメジャーリーガーの凱旋に、巨人のみならず日本のファンは大きな期待を寄せる。

メジャーでの9年間を経て上原はどんな投球を見せてくれるのか。
今回は、上原の2017年の投球をトラックマンデータから分析していく。

上原浩治分析概要
4シームは、「遅いのに伸びる」ボール!?
決め球スプリットの落差は意外にも小さかった!
エクステンションって?フォームの秘密に迫る

「球速が遅い速球派」!?

各球種の球速と投球割合

まず、上原の投球の中心は4シームで、その割合は63%を占めていた。スプリットと併せて95%を占めており、ほぼ2球種のみで勝負している。

データ(baseballsavant)上で2017年に投球された球種は4球種であったものの、上原自身は、2シームの投球を否定しており、本稿では2シームを除いて分析を進めていく(表1)。

表1 球速と投球割合。本稿は2シームを除く3球種を分析する
球種平均球速
(km/h)
平均球速
(%)
投球割合
(%)
4シーム140
(150)
100
(100)
63
スプリット127
(136)
91
(91)
32
スライダー131
(136)
93
(91)
3
参考(2シーム)138
(148)
99
(99)
(2)

カッコ内はメジャーリーグ平均

4シームの平均球速は140km/hと、救援投手ながらメジャーリーグ平均を大きく下回る。しかし、投球割合は63%と圧倒的に高く、上原は「球速が遅い速球派」の投手なのだ。

では、なぜ140km/hの4シームが打たれないのか。回転数とボール変化量の観点から秘密を探る。

ホップ成分が大きな球質!!

各球種の回転数とボール変化量

特徴的なボールは4シームだ。回転数が高く、ホップ成分はメジャーリーグ平均を約10cmも上回る。仮に打者が平均的なボールをイメージして打ちにいくと、ボール1~1.5個分も伸びるように錯覚するボールで、空振りを奪いやすい球質だ(表2)。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~

表2 回転数とボール変化量。ホップ成分はメジャーリーグ平均を約10cmも上回る
球種回転数
(rpm)
縦変化
(cm)
横変化
(cm)
4シーム2367
(2250)
52
(43)
35
(22)
スプリット1709
(1513)
23
(17)
43
(30)
スライダー2115
(2362)
29
(9)
7
(-12)

カッコ内はメジャーリーグ平均

さらに、上原の4シームの特異性を示すデータを紹介する(図1)。
図1はメジャーリーグで投球された全4シームから、球速とホップ成分の関係をみたものだ。球速が高まるにしたがって、ホップ成分が高まっていることがわかる。

図1 球速とホップ成分の関係。上原は平均140km/hながら、ホップ成分が大きい

球速とホップ成分が比例関係にあるということは、球速が低いボールはホップ成分が低くなりやすい。上原のように球速が低くホップ成分の大きなボールは打者にとって「ミスマッチ」となり違和感を感じるボールなのだ。

球速とホップ成分は比例関係にあるが、140km/h付近の球速帯に一度ホップ成分の大きな山ができている。この異常な傾向を作っている投手の一人は上原に他ならない。
参考:「ダルビッシュ、田中将大、上原浩治のストレートは変化球?」データで分析

落差の「小さい」スプリット

4シームと同様かそれ以上に代名詞となっているのがスプリットだ。
しかし、上原のスプリットは意外にも平均より「落ちない」ボールなのだ(図2)。

図2 ボール変化量。スプリットはメジャーリーグ平均(薄色)よりもホップ成分が大きい

上原のスプリットをメジャーリーグ平均(図中薄色)と比べると、ホップ成分が大きいことがわかる。つまり、意外にも平均より「落ちない」ボールなのだ。

しかしながら、高い空振り率を誇るスプリットにはある秘密がある。
「ヤンキース時代の松井秀喜さんに言われたんですが、僕のストレートとスプリットは途中まで同じ軌道なので、どうしても的を絞りきれないと」
(Sports Graphic Number 924号より)
松井が感じたように、上原の4シームとスプリットは、途中まで同じボールに見えるのだ。

近年、メジャーリーグでは「ピッチトンネル」と呼ばれる概念が登場し、このように打者が球種の違いを認識しづらいような組み合わせを意識している。上原はその概念が提唱される前から自然と技術を身につけていたのだろう。

「エクステンションの短さ」も大きな武器

リリースポイントの位置

最後に上原の独特な投球フォームの特徴を紹介する。エクステンション、つまり「球持ち」が非常に短いのだ(表3)。

表3 リリースポイント。エクステンションが平均値よりも極端に短い
リリース高
(cm)
リリース横
(cm)
エクステンション
(cm)
185
(182)
42
(59)
169
(188)

カッコ内はメジャーリーグ平均

一般的に、投球指導の現場ではエクステンションが長い投手を良しとする。たしかに物理の力積(力と時間)の観点から考えると、エクステンションの長いフォームはリリースまでの時間を長くし、ボールにより大きな力を与えることができる。

しかし、タイミングがつかみにくいという観点においては、エクステンションが短いフォームも武器になりうる。上原のエクステンションは、メジャーリーグ平均より約20cmも短い。上原のような「球持ち」の短いフォームは、打者からするとボールが突然投球されるように錯覚するのだ。

上原浩治は巨人の救世主となるのか!

上原は、ホップ成分の大きな4シームを武器にメジャーリーグで活躍してきた。日本ではどんな活躍を見せてくれるのだろうか。
まず、巨人ではセットアッパーとして起用されるだろう。特徴あるフォームから、少ない球種で勝負するタイプであることからも、リリーフ適性が強い投手であるといえる。

一方、懸念材料が一つある。
メジャーリーグでは、「球速が遅く、ホップ成分が大きい」というミスマッチで打者を困惑させていた。しかし、日本では平均球速が遅く、メジャーリーグのように「動くボール」を投球する投手が少ない。日本の打者がホップ成分の大きな4シームに慣れているとすると、メジャーリーグの打者ほど困惑させることが出来ないかもしれない。ホップ成分が大きいボールは、フライ打球になりやすく、長打の危険性も含んでいる。

しかし、上原には4シーム以外にも武器がある。独特なフォームから繰り出されるスプリットをうまく組み合わせれば、武器である4シームも威力を増し、日本でも活躍が期待できるだろう。

【動画】140km/hの4シームでメジャーリーガーを抑える投球は圧巻だ

昨年巨人は11年ぶりにBクラスに沈んだ。上原はメジャーでの経験を活かし、救世主になってくれるに違いない。いち野球ファンとして、上原の投球を今かと待ちわびている。

上原浩治分析まとめ
球速は遅いがホップ成分が大きい4シーム!!
決め球スプリットは「4シームと同じに見える」ボール!?
エクステンションの短いフォームで打者を困惑させる!

上原浩治のプロフィール

1998年ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。数々のタイトルを獲得した後、2009年よりメジャーリーグに挑戦。
ボストン・レッドソックスではクローザーとして2013年の世界一に大きく貢献した。
メジャー通算成績は22勝26敗95セーブ。あと10ホールドで日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成する。

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