投球理論

「先発タイプ」ってどんな投手?持ち球からその適性を考える

プロ野球ではシーズンも終盤に差し掛かり、いよいよ優勝争いも佳境を迎えつつある。また同時に、来季の編成に向けた動きも本格化する時期でもある。
ドラフト候補や新外国人選手といった新戦力投手の選手評では「先発タイプ」「救援タイプ」といったように分類されていることも多い。

しかし、この「タイプ」は評価者の主観で定義した曖昧な基準である場合が多いのではないだろうか。
「先発タイプ」とはいったい何なのか。一要素で決められるものではないと前置きしつつも、今回は「持ち球」にフォーカスした上で、メジャーリーグのデータからその適性を探っていきたい。

目次:“先発タイプ”ってどんな投手のこと?
先発投手の持ち球数ってどのくらい?
長いイニングを投球する能力とは
救援投手の持ち球は「空振り割合の高い球種」

多くの球種を投げる先発投手

まずは持ち球の「数」に注目してみる。本稿では2018年に先発で80イニング以上投球した145人を先発投手、救援で50イニング以上投球した146人を救援投手と定義し比較した(表1)。

投球割合が1%以上であった球種を持ち球と定義し、持ち球の数を先発投手と救援投手で比較すると、先発投手の持ち球は平均4.7球種で、救援投手よりも約1球種も多かった

表1 持ち球合計球種数の比較
球種数先発救援
20.7%10.3%
36.9%27.4%
431.0%42.5%
546.9%15.1%
613.8%4.8%
70.7%0.0%
平均球種数4.73.8

※2018年MLBデータ

救援投手は2〜3球種の投手も多い一方で、先発だと2〜3球種で勝負するような投手はほとんどいなかった。

救援投手はショートイニングの登板で同一打者と複数打席対戦することは少ないため、得意な球種を次々と投げ込み勝負するのに対し、先発投手は打者に目を慣れさせないよう多くの球種を駆使して勝負しているのかもしれない。

救援投手は多くの球種を必要としていない可能性もあれば、多くの球種を投げ分けるのが苦手であるため、得意球を中心に勝負できる短いイニングを任せられている可能性もある。

日本人投手をみても、田中将大(ヤンキース)、ダルビッシュ有(カブス)、前田健太(ドジャース)ら長年活躍する先発投手の持ち球は5〜6球種であるのに対し、救援投手である平野佳寿(ダイヤモンドバックス)の持ち球は2球種であった。
メジャーリーグで先発投手として活躍するには、多くの球種を駆使することも必要な能力の一つであるのだろう。
参考:上原浩治の「打たれない」140キロの秘密をトラックマンデータで徹底解析!

先発投手が有する長いイニングを投球する能力

続いて、投手がどんな球種を持ち球としているのかを見ていく。各球種がどれくらいの割合でそれぞれの投手の持ち球となっているのかを比較した(表2)。

表2 各球種の持ち球頻出割合の比較
球種名先発投手救援投手
速球94.5%91.8%
2シーム80.7%69.9%
スライダー75.9%79.5%
カーブ67.6%39.0%
チェンジアップ90.3%58.2%
カットボール33.8%22.6%
スプリット7.6%8.2%

※2018年MLBデータ

速球はメジャー全体で最も投球割合が高く、先発投手・救援投手ともに9割を超える投手が使用している。また、日本ではほとんど見られないが、速球を投げず2シームやカットボールを投球の中心としている投手も一定数存在した。

一方変化球は、先発投手・救援投手で割合に大きな違いがみられた。特に差が大きかった球種は、カーブとチェンジアップ先発投手の方が高い割合で持ち球としており、両群で約30%も差が開いていた。

この両球種の特徴は球速が遅いことである。先発投手は、長いイニングを投球する能力が求められる。全力で100球近く投げ続ける事は容易でないうえ、打者も2巡3巡とするうちに投手のボールに目が慣れてくる。緩いチェンジアップを使って左右上下だけでなく「奥行」を広く活用したり、打者の打ち気を逸らすような大きな変化のカーブを使ってカウントを整えたりする事で、さまざまな打ち取り方を目指しているのであろう。

また、カットボール、2シームも先発投手の方が持ち球の割合が高い。この2つの球種は非常に高速な変化球である。先発投手は球速の遅い変化球だけでなく、高速かつ変化の小さな変化球も織り交ぜて、ファールでカウントを整えたり、早いカウントでゴロを打たせたりしているのであろう。
参考:真っ向勝負は時代遅れ?球種別のイベントの特徴!

逆に救援投手の方が多く持ち球としていた球種は、スライダー、スプリットであった。この両球種は、「空振り割合が非常に高い」という特徴がある。救援投手は1点も与えたくない場面や、すでにランナーをおいた場面での投球が多い。打者がバットに当ててしまうとアンラッキーでも失点する可能性があり、バットに当てさせない意図で空振り割合の高い球種を投げこんでいるのであろう。

「先発投手の適性」とは

ここまで持ち球にフォーカスして先発投手の適性を探ってきた。以下に傾向をまとめてみたい。

先発投手は救援投手よりも持ち球の「数」が多い
先発投手は「球速が遅い球種」を持ち球としている投手が多い
救援投手は「空振り割合の高い球種」を持ち球としている投手が多い

救援投手は自分の得意な球種を中心に「積極的に空振りを狙いにいくこと」を目的にしているのに対し、先発投手は幅広い球速帯や多くの球種を組み合わせて的を絞らせず「長いイニングを投げ抜くこと」を目標としていることが分かる。

つまり持ち球から探る先発投手の適性とは、「幅広い球速の球種を、多く扱える能力」といえるだろう。それらの能力に加え、救援投手のような空振りを奪う能力も併せ持つ投手こそが一流の先発投手なのかもしれない。

過酷なメジャーで戦い抜くため、日本人投手も工夫を重ねてきた。ダルビッシュは年々細かく球質を変化させ、スライダーやカットボールの改良を重ねている。田中や前田も、決め球でさえモデルチェンジに挑戦している。

メジャーで活躍できるのは、ボールそのものだけでなく環境に適応するために変化できる能力をもつ選手なのかもしれない。
参考:大谷翔平デビュー戦の全球種をデータで分析!武器は球速160キロの速球だけにあらず!?