
球速ランキング Jバーランダー
- 目次
- 飛距離は真ん中やや内角が最大
- 速度は外角 角度は内角!
- スイングの特性からコースと打球の関係を考える
- P飛距離は真ん中やや内角が最大
- P速度は外角 角度は内角!
- Pスイングの特性からコースと打球の関係を考える
「外角に投げれば安全」「内角は長打が多い」指導や解説で耳にしたことも少なくないだろう。今回は、これら投球コースと打撃に関する野球界の定説をデータから検証してみたい。
2016年~2018年のMLBの全打球約34万球のトラックマンデータから、投球コースを内外角(左打者は反転)1センチずつに区切り分析した。内外角のコースは打撃にどのような影響を与えていたのだろうか。
飛距離は真ん中やや内角が最大
まず、内外角のコースと飛距離の関係をみてみる。トラックマンで取得したホームベース到達時のボールの位置を1センチずつに区切り平均飛距離を算出した(図1)。

飛距離は真ん中やや内角気味が最も大きかった。ストライクゾーンギリギリになるにつれて飛距離は抑えられ、内角よりも外角の方が飛距離が飛距離は抑えられていた。
単純な飛距離だけでいえば「外角の方が安全」と言っても良いだろう。ただし、この飛距離の内訳をみてみるとまた違った結果がみえてきた。
速度は外角 角度は内角!
飛距離の内訳として、内外角のコースと打球速度、打球角度の関係をみてみたい(図2、3 スマホはタップで切り替え)。


内外角のコースと打球速度の関係をみると、実は内角よりも外角の方が打球が速いことがわかる。しかし、飛距離は内角の方が大きい。その秘密が打球角度にあった。
内外角のコースと打球角度の関係をみると、内角が最も大きく外角になるほど大きく角度が低下している。内角は打球速度が遅いものの、角度がつけやすいため飛距離が大きかったのである。
このように内角と外角では打球の「性質」が違う。必ずしも外角が有効とは限らず、投手は場面や打ち取り方によって最適なコースを選択すべきかもしれない。
スイングの特性からコースと打球の関係を考える
ここまでトラックマンデータを使って内外角のコースと打球の関係を見てきた。それらを一度整理し、最後にスイングの特性との関係を考えていきたい(図4)。

繰り返すようだが、内角のコースのボールは打球速度は低いものの角度が大きく飛距離も大きい。逆に外角のコースのボールは打球速度は速いものの、角度が小さく飛距離も出にくい。
最新の研究結果によると、引っ張り打球はアッパースイング局面、流し打ちはダウンスイング局面でボールを捉えやすいとされている(森下・矢内 2018)。内角は引っ張り打球、外角は流し打ち打球が多い。ほとんどの打者が、構えた位置からダウンスイング局面を経てアッパースイング局面へ向かうため、手元で捉えた外角は打球角度が小さくなりやすいのだろう。
このように、スイングの局面を考えると、どんな打球を打たせたいかで有効なコースは変わる。例えば、内野フライで完全に抑え込みたい場面では、内角も有効な手段といえるかもしれない。もちろん、球速や球種、球質によってもそれらは様々変化する。
トラックマンデータの普及により、従来の野球の定説も続々と変化していくかもしれない。
参考:「外角低めって本当に安全?」トラックマンデータで徹底分析
引用:
森下義隆、矢内利政(2018)バットスイング軌道からみた左右方向への打球の打ち分け技術、体育学研究63、P237-250
Baseball Geeks編集部