高校野球

増加する大学野球人口 広がるチーム格差が課題

野球人口の減少に関する指摘は年々多くなっている。野球選手が減少している理由は、野球に触れる機会が減ったことや野球チームに入ることに抵抗を感じる方が増えたことが挙げられる。いずれも、文化や価値観の変化に野球界が対応できなかったことが原因にあると思われる。
一方、野球人口の問題は、幅広い年代や競技レベルで議論されるべきだが、ジュニア期などの特定の年代に限定されて議論されることが多い。そこで、今回は、小学生から成人の野球人口を包括的に分析し、「野球選手数の減少」の問題を再考する。後編では野球人口に関する課題と解決方法について述べる。
激減する野球人口 高校野球は5年連続で減少

目次:増加する大学野球人口の背景とは
野球人口は減少、野球継続率は増加
部員数の格差は急速に拡大
1チームあたりの部員数の適正人数は?

野球を継続する選手は増えている

野球人口減少が問題視される昨今だが、実は大学野球選手数は増加している。それはなぜなのだろうか。
答えは野球継続率が上がっていることである。まず、中学生時の野球部員数を100%とした場合、中学から大学までの野球継続率は、5%(2003年)から9%(2013年)に増加した(図1)。

図1 野球継続者の割合

また、高校から大学までの野球継続率は、11%(2006年)から15%(2014年)に増加した。選択肢が多様化する中、野球を継続する選手が増えたことは、一見すると朗報にも思える。しかし、野球人口の問題はそんなに単純ではない。

部員数の格差は急速に拡大

野球継続率は上がっている。一方、野球選手数の減少によって、1つの学校だけでは9人が揃わないチームも多くなっている。中学軟式では、1チームあたりの部員数が、35人(2001年)から20人(2018年)に減少した(図2)。一学年あたりの部員数は6.6人であり、特に3年生が抜けた後の新チームでは単独で試合に出場できないチームが多くなってしまうということだ。
また、高校硬式の1チームあたりの部員数は、2014年に42人で過去最大になった。その後は減少し、2019年は36人であった。

図2 1チーム当たりの部員数(中学軟式、高校硬式、高校硬式)

増える合同チームの背景

2001年以降、合同チームの数は指数関数的に増加しており、2018年には600チームになった(図3)。
人数が少ないと、仲間がいなくて面白くない、野球競技力の向上が見込めない、試合で勝利するのが難しいと感じる選手も多いのではないか。
一方で、中学硬式は少子化にも関わらず、競技人口にほとんど変化がなく実質的には増加傾向である。つまり、中学硬式は、学校部活動に不満や不安を感じている選手の受け皿になっている可能性がある。

図3 中学軟式合同チームの数

部員数格差と競技力格差

先述した通り、合同チームの数は中学軟式と同様に増え続けており、2019年は86チームであった。一方、2017年の選手権大会(夏の甲子園)出場チームの部員数は平均84人、部員数が100人を超えるチームは49チームのうち14校もあった(引用1)。
強いチームに選手が集まり、弱いチームには選手が集まらない。当たり前のように感じるが、合同チームの数が急増し始めたのはここ10年以内である。近年は公園での野球遊びが禁じられている。従って、遊びから野球を始めるのではなく、チーム所属してから野球を始めている選手が多い。
「野球=楽しい」というよりは、「野球=習い事=競技力向上」という選手が多くなっている可能性もある。競技力志向の高まりと部員数格差や競技力格差が関連して拡大しているのであれば、今後も合同チームは増え続けるだろう。
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増える大学野球人口の背景

中学軟式、高校硬式の1チームあたりの部員数が減少しているにも関わらず、大学硬式では、1チームあたりの部員数が55名(2007年)から75名(2019年)に増加した(図4)。

図4 大学硬式の1チーム当たりの部員数の平均値

大学硬式の試合ではベンチ入り人数が25名であり、75名でも十分選手数は足りている。それにも関わらず、全国大会出場チームの部員数は、107人(2008年)から141人(2016年)に増加した。部員数が150名を超えるチームは2(2008年)から10(2016年)に増加した。

プロ野球には1軍と2軍があり、選手の人数は合計で70名であり、いずれも試合や練習をする環境がある。この基準が選手の育成に相応しい環境とすると、150名を超える部員数は、選手を育成する上で適正な人数とは言い難い

強いチームに選手は集まる

大学硬式や高校硬式の全国大会出場チームは、なぜ1チームあたりの部員数が適正人数を大きく上回っているのだろうか。競技力志向が高い選手が、勝利できるチームで野球をやりたいのは理解できる。指導者としては、多くの選手から選抜をしたほうが、少ない選手を育成するよりも確実に試合で活躍する選手を確保できる
多くの選手を囲い込むことで、他チームに優秀な選手が流れることを防ぐこともできる。大人の事情でいえば、学生数を確保するために野球選手を積極的に入学させている大学もあるかもしれない。
いずれにしても、選手、チーム、学校側の需要と共有が見合っていることが特定のチームの部員数が多くなる理由であろう。

野球満足度は高まるのか?

このような強豪チームの部員数の増加が、選手個々の野球に対する満足度に繋がるのかは疑問もある。部員数が増えれば試合に出られない選手が増えるからである。適正人数を越えた部員数は、選手の満足度低下、野球からの離脱、さらには次世代の野球選手減に繋がる可能性もあるのではないか。

一方、中学、高校では1チームあたりの選手数が減り、試合に出場できる選手の割合は増加した。試合に出場することで、野球に対する満足度も高まり、高校、大学で野球を続けたいと思う選手が増えた可能性もある。
つまり、野球人口は増えればよいのではなく、野球に対する満足度を高めることが最も重要である。それが達成できなければ、場当たり的な野球普及活動により一時的に野球人口増が増えたとしても、その後に野球人口激減を招くこともある。

なお、今回は中学から大学までの野球選手数を分析したが、野球人口を再考する上で最も肝心な小学生の動向が明らかではない。また、使用した選手数にはマネージャーの数も含まれている場合もあり、算出したデータには多少の誤差を含んでいる。
野球界の最も大きな問題とされる連盟の壁を打破し、野球選手のID化をする。そして、野球人口の課題を明確にした上で効果的な方策を実行されることを期待したい。

勝亦陽一(かつまたよういち)
東京農業大学応用生物科学部 准教授。野球の能力に影響する環境要因・生まれ月・競技開始年齢・兄弟構成・練習頻度、などの調査研究等を行っている。中・高校生向けのトレーニング指導や講演(「考えてバッティングをするための科学的アプローチ」等)も多数行っている。
【勝亦氏のプロフィールはこちら】http://yo1walker.wixsite.com/katsumata-yoichi
【勝亦氏のTwitterはこちら】https://twitter.com/Katsumata_Yo

参考資料
1. 甲子園2017夏完全ガイド(2017), ベースボール・マガジン社.
2. 輝け甲子園の星2010, 2011, 2016早春号(2010、2011、2016), 日刊スポーツ出版社.
3. 全日本大学野球選手権 第57回大会, 第65回記念大会パンフレット(2008, 2016), 公益財団法人 全日本大学野球連盟.