高校野球

早生まれ野球少年のドロップアウトはなぜ起こるのか?

プロ野球選手の生まれ月に偏りがあることをご存じの方も多いだろう。生まれ月は成長期の球児にどのような影響を与えるのだろうか。そこで著者は、小学生からプロ野球選手まで5000人を超える野球選手を対象に生まれ月の影響について調査を行った。
参考:プロ野球での活躍に誕生月の影響あり!?ドラフト前にデータで検証

目次:早生まれ野球少年のドロップアウトはなぜ起こるのか?
早生まれ球児は野球をドロップアウトする傾向?
選抜チームに選ばれる早生まれ球児は5%未満?!
ドロップアウトを食い止めるのは指導者の役目

早生まれ野球少年はドロップアウトする傾向?

図1には全国大会出場などの特筆した競技成績のない一般の小学生、中学生、高校生球児の生まれ月分布を示した。小学生では3カ月毎の割合に差がないが、中学生、高校生では早生まれ球児の割合が低く、4~6月生まれの割合が高かった。(参考文献1)
両者の割合の差は、中学生、高校生と拡大した。本調査で対象とした選手と同年齢の日本人に生まれ月の偏りはないことを考慮すると、早生まれ球児は、他の生まれ月の選手よりも野球から離脱している(淘汰されている)ことが推察される。

図1 球児の生まれ月分布。早生まれ球児の割合は年齢経過とともに小さくなる(一般野球選手844名、一般中学生野球選手1426名、一般高校野球選手830名)

小学生の投手には早生まれの割合が少ない

早生まれ球児が中学校入学以降に野球から離脱する原因は、小学生期にあると考えられる。そこで、生まれ月が小学生のポジションに及ぼす影響を検討した。その結果、投手以外(捕手、内野手、外野手)では生まれ月の偏りはなかったが、投手では4~6月生まれが33.8%、1~3月生まれが21.3%であり、生まれ月に偏りがみられた(参考文献2)。

投手は試合の勝敗を左右するポジションであり、速いボールをコントロール良く投球する能力が求められる。4~6月生まれに投手が多い理由は、同学年内において身体の大きさや基礎的な運動能力が高く、投能力にも長けているからであろう。
参考:プロ野球本塁打王の体格はメジャー平均並!?データで比較
また、主観的ではあるが、小学生球児に「試合に出場する頻度」について尋ねたところ、「試合にあまり出場しない」と回答した割合は1~3月生まれが29%であり、その他の生まれ月の選手より高かった。

選抜チームに選ばれる早生まれ球児は5%未満

タレント発掘・育成への影響を検討するために、地域の選抜チーム選手の生まれ月を調査した。選抜チームとは、国、都道府県または市区町村などの野球連盟が、所属チームの枠を越えて選手を召集して大会などに出場する際の呼称である。その結果、4~6月生まれは全体の56.1%であり、1~3月生まれは4.2%であった(図2)。

図2 小学生球児の生まれ月分布(一般選手844名、全国大会出場選手157名、選抜チーム選手189名)

同学年の選手から野球が上手な選手を選抜するのだから、身体がより成熟している4~6月生まれの選手が多いのは必然とも言える。一方、1~3月生まれがほとんど選出されないのは、野球の素質がないのではなく、発育段階が他の選手よりも遅いことが大きな理由である。

大人が「目先の勝利」から「選手の将来を優先」に変わること

ドロップアウトを食い止めるのは指導者の役目

上記の研究結果から、早生まれの選手が年齢経過とともに野球から離脱していく理由がみえてきた。早生まれの選手は、親やコーチなど他者からの評価が得られず、試合に出場できない、担当するポジションも限定され、優れた競技成績を残すことができないという悪循環に陥りやすい
このような状況では、自分はできる、練習すれば野球が上手になる、仲間や指導者から受け入れられているといった野球に対する有能感は高まらない。早生まれの選手が感じる閉塞感が野球からの離脱に影響を与えているのだろう。
数多くの競技の中から野球を選んでくれた選手が、生まれ月の影響で野球から離脱してしまうのは残念である。しかし、このような状況を改善し、生まれ月の影響を小さくするのは容易ではない。
一方、選手の試合出場機会、ポジション、選抜選手を決めているのは指導者の大人である。4~6月生まれの選手を優先して投手に起用したり、選抜チームに選出するのは、大人が目先の試合に勝利したいからではないか。

多くの選手に投手の経験をさせる

例えば、投手は野球において最も重要なポジションの1つであり、野球選手にとって憧れでもある。優れた選手の育成や発掘を目的とするのであれば、できるだけ多くの選手に投手を経験させたほうがよい
また、「目先の勝利」ではなく「選手の将来を優先」することで、身体発達が早い4~6月生まれの出場者が多いジュニア期の全国大会や選抜チームの意義、選抜チームの選考基準も再考されるのではないだろうか。

勝亦陽一(かつまたよういち)
東京農業大学応用生物科学部 准教授。野球の能力に影響する環境要因・生まれ月・競技開始年齢・兄弟構成・練習頻度、などの調査研究等を行っている。中・高校生向けのトレーニング指導や講演(「考えてバッティングをするための科学的アプローチ」等)も多数行っている。
【勝亦氏のプロフィールはこちら】
http://yo1walker.wixsite.com/katsumata-yoichi
【勝亦氏のTwitterはこちら】
https://twitter.com/Katsumata_Yo

参考文献
1. Yoichi Katsumata et al., Characteristics of Relative Age Effects and Anthropometric Data in Japanese Recreational and Elite Male Junior Baseball Players, Sports Medicine – Open, In Press, 2018.
2. Yoichi Katsumata,Influence of the Relative Age Effect on the Competitive Level and Playing Position of Male Japanese Elementary School Baseball Players, International Journal of Sport and Health Science, In Press, 2018.