打撃理論

初球の入りは大切!?カウントによる打者・投手への影響

「初球の入り大事に!」「追い込まれたから変化球が増える」
野球では、試合中の掛け声や定説にカウントが関連していることは少なくない。しかし、本当にカウントによってパフォーマンスは変化しているのだろうか?
今回は2019年のMLBとNPBのデータを使いカウントによる打撃や投球の変化を分析していきたい。

0ストライクでは見逃し、2ストライクでは空振りが多い!

まず、MLBのデータを使いカウント毎にどのようなイベントが発生しているのかを見てみる(表1)。

表1 カウント毎のイベント発生割合

0ストライクのカウントでは見逃しが多く、2ストライクのカウントでは空振りが多いことがわかる。
一般的に言われるように、0ストライクでは見逃しを、2ストライクでは空振りを誘うような戦略で投球しているのであろう。

カウントの違いは打球速度に影響する

次に、カウント毎に打球速度を示した(表2)。特筆すべきは、カウントによって打球速度が変化している点であろう。ボール先行のカウントでは打球が非常に速くなり、最も遅い0ボール2ストライクと比べると、3ボール0ストライクでは約10キロも打球速度が違った

表2 カウント毎における打球速度の比較

打者有利のカウントでは打者がフルスイングしやすかったり、狙い球が絞りやすかったりするため打球速度が大きく上昇するのであろう。つまり投手側の視点から見ると、投手有利なカウントにすることはそれほど重要といえる。
参考:【MLB打者ランキング2019】大谷翔平・ジャッジらの順位は!?

初球にストライクを取ることはやはり重要!

続いて、初球にスポットを当ててみる。初球にストライクを取った場合(0-1)とボールになった場合(1-0)では、両カウントで約4キロも打球速度が違うという結果であった。野球の定説で「初球は大切」と言われるが、「初球にストライクを取ること」が非常に重要であるということがこのデータから示されている。

打者の視点から見ると、ストライクを取られる毎に打球速度がどんどん下がっていき、さらに追い込まれるカウントでは投手は空振りを奪うボールを多投してくる。そのため、ファーストストライクに打つことが非常に重要であろう。

プロは初球に強い!

NPBのデータから初球に強い選手を見てみよう。ファーストストライクに長打を打った割合トップ5を並べてみる(表3)。

表3 ファーストストライクにおける長打割合ランキング
順位選手0ストライクからの打撃0ストライクからの長打割合(%)
1森 友哉1332720.3
2山田 哲人1142219.3
3村上 宗隆1092119.3
4神里 和毅1102119.1
5中村 剛也1462718.5

先述したデータからみるにファーストストライクから振れるという打者は非常に価値が高い。若い年齢から活躍している打者も多く、狙い球を絞ってフルスイングできる能力はハイレベルな投手に順応するうえで貴重な能力なのかもしれない。

同様に、ファーストストライクからアウトを奪った割合トップ5を並べてみる(表4)。

表4 ファーストストライクにおけるアウト奪取率ランキング
順位選手0ストライクからの打撃0ストライクからのアウト割合(%)
1ロメロ11810084.7
2ボルシンガー997676.8
3有原 航平13210176.5
4大野 雄大14811376.4
5金子 弌大1128575.9

球速が高速ないしは動くようなボールを有している投手が多い。打者有利なカウントからも打ち取れる武器を持っているということで、長いイニングを投球する力を持っている投手といえるだろう。

初球への意識がプレーの鍵に!

今回は、カウントについて様々なデータを紹介してきた。0ストライクのカウントでは見逃しが多く、2ストライクのカウントからでは空振りが多い。
さらには、打者有利なカウントになると打球速度が上がり、投手有利なカウントになると打球速度が下がる。

そして、初球にストライクを取るのとボールを取るのでは、打球速度が非常に大きく変わるということで、初球にストライクを奪うことの重要性がわかるのではないだろうか。観戦やプレーの際には、「初球」にも注目してみてほしい。

森本 崚太(もりもと りょうた)

株式会社ネクストベース・アナリスト。 トラッキングデータをはじめとした野球データの解析を担当。 プロ野球球団および選手にフィードバックやコンサルティング。菊池雄星投手ほかプロ・アマ多数の投手の球質測定やピッチデザインの支援も行う。昨年7月発売の「新時代の野球データ論」では記事執筆も担当。

Baseball Geeks編集部