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プロ野球

中日・髙橋宏斗投手の球質を大公開!佐々木朗希・奥川恭伸らとの違いとは



目次
球速はメジャーリーガー平均に並ぶ
奥川以上の球速、佐々木以上の球質?
シュート回転は改善するな?回転軸角度の特徴
昇竜復活その先へ

オープン戦も終盤に差し掛かり、いよいよ球春到来モードとなってきた。ルーキーたちの実戦デビューも続々と続いているが、今シーズンの目玉の一人は中京大中京高出身の中日・髙橋宏斗投手であろう。
実戦デビューこそまだだが、ブルペンや打撃投手では早くも150キロを超える球速を記録し、周囲をどよめかした。

今回は、高校時代のトラッキングデータを使って髙橋投手の凄さを紹介しつつ、将来像を探っていきたい。

球速はメジャーリーガー平均に並ぶ

本稿では髙橋投手のストレートのデータを紹介する。
最も特徴的なのは球速で平均150キロを記録した(表1)。メジャー平均が150キロであると考えると、球速は既にプロの一軍投手に混ざっても遜色ない

先発でこの球速で投球し続けることができれば、プロでも先発投手として大きな活躍が期待できるであろう。

表1 ストレートの球質比較。球速はメジャー平均に並ぶ

次に、速球の「球質」を探るべくボール変化量というデータをみてみる。これは”回転によってボールがどれくらい変化したか”を示す指標である。平均よりホップ成分が大きなボールは打者がいわゆる「ノビ」を感じやすい。細かくは割愛するが、投手の特徴を知る上で非常に有用な指標となる。
参考:“回転数多い=ノビのある球”ではない? データから迫る「ノビ」の正体

髙橋投手の速球は、シュート成分30cm・ホップ成分46cmと共にプロ平均よりも大きな球質であった。いわゆる「シュート気味に伸びる球質」であるのが特徴と言える。回転軸角度も90°に近く、バックスピンに近いボールというデータも特徴的だ。

ではこの球質を、昨年の大型ルーキーであるヤクルト・奥川恭伸投手、ロッテ・佐々木朗希と比較してみたい。

奥川以上の球速、佐々木以上の球質?

髙橋投手の球質を紐解くために、奥川投手、佐々木投手の高校時代の球質データと照らし合わせてみる(図1)。
髙橋投手の速球のホップ成分は、すでに高校生平均をはるかに上回り、プロ平均以上の値を記録していた。
球速こそ佐々木投手(平均152キロ)には劣ったものの、ホップ成分は3投手の中でトップであった。

図1 ストレートのボール変化量比較。髙橋投手のホップ成分は3投手中トップ

計測環境が異なるものの、19年ドラフトには合計7球団に1位指名された怪物投手たちにも引けを取らない速球を有すると言っても良いだろう。

圧倒的な球速を有する佐々木投手、制球や変化球併せ高い完成度を誇る奥川投手とすでに強烈な個性をもつ投手たちに対し、髙橋投手がどのような投手に成長していくのか大きな注目が集まる。
参考:佐々木朗希の球質を大公開!163キロ右腕の凄みと将来像とは!

シュート回転は改善するな?回転軸角度の特徴

髙橋投手は「シュート気味に伸びる球質」であるという評を受け、「シュート気味」に違和感を覚えた方もいるかもしれない。
確かに従来の指導現場では、「シュート回転する速球」は推奨されていなかった。しかし、髙橋投手は無理に改善する必要はないだろう。

髙橋投手の速球は回転軸角度が非常に大きい。回転軸がバックスピンに近いボールは、多くの揚力を獲得することが出来る(図2)。シュートを減らそうとするあまり回転軸がジャイロ気味になってしまうと、獲得する揚力が減少しホップ成分も失ってしまうリスクがある

パドレス・ダルビッシュ有投手は昨シーズン、回転軸角度を大きくすることでホップ成分の大きな速球へとモデルチェンジした。その結果、シュート成分自体は大きくなったものの空振り割合が向上した。髙橋投手も「シュートさせないこと」を意識するよりも「ホップ成分を活かすこと」に注力し、プロのステージでも空振りを量産できる速球を目指して欲しい。

図2 速球における回転軸の違いのイメージ

元巨人・上原浩治投手やアストロズのバーランダー投手は、シュート成分だけでなくホップ成分も共に大きなタイプの球質で空振りを量産している。シュート成分が多い髙橋投手は元阪神・藤川球児投手のような「真上に伸びる速球」よりも、彼らのような速球を目指すべきではないだろうか。

昇竜復活その先へ

今回は、高校時代に測定したボール変化量のデータから髙橋宏斗投手の凄さを考察してきた。世代最強右腕の呼び声にふさわしく、プロ投手にも引けを取らない速球を有しているといえるだろう。

また、筆者が最も驚かされたのは、鋭い感性やプロ顔負けの速球ではなく強い知的欲求であった。貪欲に質問し投球に取り入れようとする姿を見ると、プロで多くの刺激を受けた暁にはさらに素晴らしい投手に成長するであろうことを確信させた。

待望の地元出身エース候補に期待も高いが、焦らず持ち味を磨きスケールの大きな投手に成長して欲しいと願う。

引用
神事努(2013): プロ野球投手のボールスピンの特徴 . 日本野球科学研究会第一回大会報告集:24-26

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森本崚太/Baseball Geeks編集部