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【MLB】空振りが大きく減少?!異物の取り締まり強化で投球はどう変わるか



目次
異物についてのニュースをおさらい
4シームとカーブの回転数が大きく減少
4シーム・カーブは空振りを狙いづらい球質に
空振り減。フライ増。打者が有利な環境に
投手は新ガイドラインへの対応が迫られる

今シーズンのMLBでは、ルールで禁止されている異物(粘着物質など)を使用し、故意に投球の回転数を増やしている投手がいるという疑惑が取り沙汰されている。そこでMLB機構は6月15日(現地時間)、異物取り締まりの新しいガイドラインを発表し、試合中の身体検査が行われることになった。この新しいガイドラインが設定されたことによって、投球は変化しているのだろうか。本記事では、トラッキングデータを用いて分析をする。
参考:【“回転数多い=ノビのある球”ではない? データから迫る「ノビ」の正体

異物についてのニュースをおさらい

まず、どうして取り締まりが強化されるようになったのか、経緯を整理する。

野球規則3.01では、異物を用いてボールを変色・損傷させることを禁止している。さらに、野球規則6.02(c)では、ボールや指先に異物をつけることを禁止している。ただ、メジャーの公式球は滑りやすいため、安定した投球を行うための粘着物質の使用は暗黙のうちに受け入れられている状態であったとMLB機構は報告している。

しかし近年、粘着性物質を利用することによって投球の回転数を増やし、パフォーマンスを著しく向上させている投手がいるのではないかという疑惑があがった。そこでMLB機構は本格的に調査を行い、シーズン途中ではあるが、異物の取り締まり強化に踏み切った。

6月2日にはマイナーリーグで調査を行い、異物を使用していた4投手を出場停止処分とした。6月15日はメジャーでの取り締まり強化を発表し、投手と捕手は投球終了後やイニング間に審判からの身体検査を受けることになった。また、ルールに違反した場合の罰則も強化された。この新ガイドラインは21日から実施され、28日にはサンティアゴ投手(マリナーズ)が出場停止処分となった。(時間はすべて現地時間)

4シームとカーブの回転数が大きく減少

異物の取り締まり強化によって、投球の回転数はどのように変わったのだろうか。指先で回転をかける球種である、4シームとカーブの回転数の推移を示す(図1)。

図1 4シームとカーブの回転数の推移(6月28日時点)

ローテーションの影響を考慮し、5日間の移動平均を示す。

4シーム、カーブともに6月に入ってから大きく回転数が減少していることがわかる。特にマイナーリーグの投手が処分された6月2日を境に、回転数が減少していることが読み取れる。実際に投手が出場停止になったことで、自身の投球を見直す投手が多かったということが読み取れる。

身体検査開始後(6月21日以降)は、カーブについては回転数の減少が止まっているものの、4シームについては依然回転数の減少が続いている。今後どのように変化するのか、引き続き注目である。

4シーム・カーブは空振りを狙いづらい球質に

では、回転数が変わることで、ボールの変化量はどのように変わったのだろうか。回転数の減少する前の6月2日以前と、新ガイドラインを発表した6月15日以降について比較する。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~

4シームはホップ成分が大きく減少している(表1)。バックスピンが減ったことで、ホップ成分が減り、空振りを取りづらくなっている可能性が考えられる。カーブはスライド成分とドロップ成分がともに減少した(表2)。新ガイドライン制定を境に、曲がらなくなったといえるだろう。4シーム・カーブともに以前より空振りが取りづらい球質になっていることがわかる

参考:ホップ成分が大きい速球は空振りを奪いやすいって本当!?

表1 4シームの変化量の推移(6月28日時点)
表2 カーブの変化量の推移(6月28日時点)

空振り減。フライ増。打者が有利な環境に

最後に、スイング時のイベント発生率を表3に示す。

表3 スイング時のイベント発生率(6月28日時点)

数字は%

6月15日以降、完全アウト(空振り・内野フライ)が減り、その分ファールと外野フライが増えている。ファールはアウトになることが少なく、フライは長打率が高いため、6月2日以前に比べて打者に有利な状況になっている。変化量が減少したことで、実際に空振りが取りづらくなっており、投手は新たなガイドラインへの対応が迫られている。

投手は新ガイドラインへの対応が迫られる

今回はメジャーの異物取り締まり強化によって、投球がどのように変化したか分析した。マイナーリーグで実際に処分が行われた6月2日以降、実際に4シームとカーブ回転数が減少した。その結果、変化量が減少し、空振りが減ったことが読み取れた。もちろん、すべての投手が異物を使ってパフォーマンスを向上させていたとは考えづらいが、暗黙の了解として受け入れられてきた滑り止めを使えなくなったことで、従来の投球をできなくなっている投手もいることだろう。新ガイドライン以降、投手のパフォーマンスがどう変わっていくか注意深く見守っていきたい。

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Baseball Geeks編集部