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MLB

打者・大谷翔平 2年目の進化【前編】~キーワードは「打球速度」~



目次
ゴロ打球の減少とフライの質向上が飛躍の鍵!
2019シーズンはさらなる爆発の予感

大きな注目を集めた大谷翔平のメジャー初年度は見事新人王という結果であった。投手としては残念ながら途中離脱となってしまったが、打者としては22本の本塁打を放つ大活躍であった。特に8月以降の活躍は目覚ましく、48試合で打率.318、13本塁打、OPS1.042とメジャー全体でも屈指の成績を残した。

今回は「トラックマン」で取得できるトラッキングデータを使って大谷の打撃の秘密を探り、8月以降に飛躍した要因や今後の課題、今シーズンの見どころ等を考えていきたい。

ゴロ打球の減少とフライの質向上が飛躍の鍵!

トラックマンは、投球された全てのボールを文字通り追尾(トラッキング)する機器で、メジャーリーグでは全球場に設置されている。取得されるトラッキングデータは多岐にわたり、球団はチーム強化に活用している。
参考:「トラックマン」とは?最先端の計測機器で取れるデータを紹介!!

昨年夏場までの大谷の打撃の課題は「ゴロ打球の多さ」であった。大谷は打球速度が速い打者でありながら、2シームやカットボールといった手元で変化するボールに対しても空振りしない器用さを持っている。ただし、器用にバットに当てることができてしまうゆえに、角度をつけるのが難しいボールにも手を出してゴロを量産してしまったのであった。

しかし、不調やスタメン落ちを経験後、8月以降に成績は大きく向上。一体大谷の打撃に何が起きていたのであろうか。一度遠回りするが、まずは打者の「被リスク管理表」というデータをみてみたい(図1)。

図1 大谷の被リスク管理表。8月以降はゴロが大幅に減っている

まず、リスクという考え方を整理する。投手と打者が対戦した際には三振・四死球・本塁打(HR)・ゾーン内打球(内野フライ、ゴロ、ライナー、外野フライ)のいずれかのイベントが発生する。それぞれのイベント毎にアウトの確率は異なり、三振や内野フライはほぼ100%アウト、ゴロだと75%前後アウトになる。

一方で、外野フライは長打が高く、ライナーだと30%前後しかアウトにならない。そのため打者は、四死球や本塁打、外野フライやライナーを増やし、アウトを奪われるリスクを減らすことが重要となる。

8月以前の大谷は完全アウトもゴロも多い打者であった。しかし、8月以降はゴロを大幅に減らし、完全アウトとゴロを足した数値はメジャー平均と同程度まで改善した。このデータからもわかるように、三振の数よりも「ゴロ打球を打たない事」が大谷にとっての調子のバロメーターとなるのだろう。
参考:トラックマンでわかる打者大谷のスゴさと弱点【前編】

外野フライ+ライナーの割合は一見微増程度に見えるが、実は同時に本塁打割合も高まっている。これはフライの「質」が高まったことによるもので、トータルの外野フライ+ライナーは大きく増加している。四死球も多く、8月以降の大谷は打者としての完成度が劇的に高まったといえる。

続けて、打球の性質毎の打球速度からフライの「質」について考察してみたい(表1)。

表1 打球の性質毎の平均打球速度。外野フライの打球速度が大きく高まっている
打球8月以前
(km/h)
8月以降
(km/h)
ゴロ142.2140.8
ライナー160.7154.5
内野フライ127.2121.6
外野フライ154.7160.6

大谷は8月以降、外野フライの打球速度が大きく高まっている。つまり、外野フライの打球速度が高まった結果、本塁打になる確率が高まったのである。

ただし、全ての打球で打球速度が高まっているわけではなく、ゴロやライナーの打球速度は低下している。もしかすると、スイングそのものやタイミングが変化し、以前よりもより「強いフライ」を打てるスイングになったのかもしれない。

実際に打球の性質毎に飛距離を8月以前と以降で比べてみると、飛距離にも違いがみて取れる(図2,3)。

図2 8月以前の打球飛距離。レフト方向は50m~75mの外野フライが多い
図3 8月以降の打球飛距離。レフト方向の打球の飛距離が伸びている

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8月以前はレフト方向の打球は50~75mの外野フライが多く、長打や本塁打になりにくかった。しかし、8月以降はその浅い外野フライが減り、レフト方向にも飛距離の大きな外野フライを打てている。フライ打球の打球速度が高まったことで結果的に飛距離が伸び、長打が増えたのであろう。

2019シーズンはさらなる爆発の予感

「ゴロを減らすこと」と、「フライの質を高めること」。これらを両立出来たことが8月以降の大爆発に繋がったのであろう。仮にスイングやタイミングが変化したとすると、フライを飛ばす「コツ」を掴んだ大谷は、今シーズンさらに爆発をみせてくれるかもしれない。
次回は、大谷の打撃に課題はないのか?あるとすれば、どのようなものなのか考察していきたい。

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森本 崚太, Baseball Geeks編集部