トラックマンでわかる打者大谷のスゴさと弱点【前編】

怪我からの復帰を果たした大谷翔平選手。後半戦の活躍に期待が集まる

写真はGetty imageより

大谷翔平のメジャーリーグ挑戦ではじめてメジャー中継を観たファンは、使われているデータの数に驚いたかもしれない。メジャーリーグでは、トラックマンと呼ばれる計測機器が全球場に設置され、投球や打撃したボールをトラッキングしている。それによって、今まで使われていた三振、本塁打といった結果データだけでなく、打球の速度や角度といったプレーそのものを数値化した数々のデータを取得できるようになった。
TV中継でもリアルタイムでそれらのデータを利用したり、各球団や選手はチーム強化やパフォーマンス向上に活用したりしている。
今回は、そんな「トラッキングデータ」を使って大谷の打撃を解説していきたい。

※本記事は7月24日発売のslugger9月号に掲載

打球速度が注目されている理由!長打や単打との関係性とは?

トラッキングデータでみる「打者」大谷はどんな打者なのか。まず一つ目のポイントは「打球速度」だ。
打球速度とは文字通り打者が打った打球の速さだ。打球速度は飛距離と相関関係にあり、高まるほど長打や本塁打が増える。さらに、打球が速いと野手の間を抜けやすくなり、単打も増えることがわかっているのだ。

図1 打球速度毎の各塁打の発生割合。打球速度が高まると長打だけでなく単打「も」増加する

昨シーズンルーキーながら本塁打王を獲得するなど大ブレイクを果たしたヤンキースのアーロン・ジャッジだが、実は前年から少ない打席ながら非常に速い打球速度を記録しており、ひそかに期待されている打者だった。このように、打球速度は打者の能力を探る上で最も注目されている指標なのだ。

では実際に、今シーズン(7/23時点)の打球速度のデータでみていこう。

大谷翔平は体重が「軽い」のに打球速度が「速い」!

大谷はメジャー全体で16位にランクインしていた。この数値はチーム内のランキングではあのトラウトをおさえて堂々の1位だ。先ほどの打球速度の図をみると、打球速度時速150キロを境に単打や長打の割合が急増している。大谷の平均打球速度は時速約150キロであるため、安定して長打が狙える非常に優れた打者といえるだろう。

表1 2018年平均打球速度ランキング(50打球数以上)。大谷翔平は16位にランクイン
順位名前打球速度(キロ)体重(kg)体重当たりの打球速度
A. ジャッジ
(ヤンキース)
154.61281.21
R. ジマーマン
(ナショナルズ)
152.51021.50
N. クルーズ
(マリナーズ)
152.51041.46
M. カブレラ
(タイガース)
151.61091.39
J. ギャロ
(レンジャーズ)
151.51071.42
J.D. マルティネス
(レッドソックス)
151.21001.51
M. オルソン
(アスレチックス)
151.21041.45
R. カノー
(マリナーズ)
151.2951.59
F. レイエス
(パドレス)
150.81251.21
10K. モラレス
(ブルージェイズ)
150.61021.48
16大谷 翔平
(エンゼルス)
150.0921.63

また、大谷のもう一つの特徴として、「体重が軽いのに打球速度が速い」ことが挙げられる。研究結果によると、体重や除脂肪体重(筋量の目安とされる)と、スイングの速度には相関があるとされている。つまり一般的には大柄で筋量の多い打者の方がスイングの速度を高めやすい。打球速度を決定する要因はいくつかあるが、スイングの速度が最も貢献するため、やはり筋量の多い打者は打球速度を高めやすいといっても良いだろう。

大谷は体重が軽いにもかかわらず打球速度が高く、体重あたりの打球速度では(打球速度/体重)打球速度上位の打者たちをも上回るほどであった。大谷は多くの筋量で速度を高めるのではなく、高い技術でスイング速度を高め、打球速度を高めている。つまり大谷は筋力だけでなく「技術」で打球速度を高められる打者といえるのだ。
後編では、「打者」大谷の弱点について分析し、どうすれば克服できるのかを考察する。
参考:打者は体が大きい方が有利!?データで検証!

引用:笠原ら: 大学野球選手のバットスイングスピードに影響を及ぼす因子(Strength & Conditioning journal 19(6), 14-18, 2012)
引用:森下ら:投球コースの違いがバットスイングに及ぼす影響 プロ野球選手と大学野球選手との比較 (野球科学研究会広告集,126-127,2016)

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