球児はいつから筋トレを始めていいの?身長発育曲線より考察

野球において、「ウエイトトレーニングは高校生になってから」という考え方は、一般論として指導者の間で根付いているのではないだろうか。しかし、子どもの成長のスピードには個人差があるので、高校生になったからと言って全員一斉に強度の高いウエイトトレーニングをしてよいというわけではない。一方で、中学生の段階で体格的に成熟している子どもは負荷のかかったトレーニングをしても問題ないだろう。
球児はウェイトトレーニングをいつから始めたらよいのか?今回は、ウェイトトレーニングや持久力トレーニングなどの体力的なトレーニングの最適年齢とその内容について考えていくとともに、球児がどの時期にどんなトレーニングが適しているのかを紹介していく。

目次:球児はいつから筋トレを始めていいの?
個々の成長に合わせたトレーニング計画をたてよう
身長の伸び方でわかる急成長のタイミング
急な成長に伴う一時的な運動能力の低下に注意

一般的には高負荷トレーニングは15歳から

まずは、ジュニアアスリートトレーニングに役立つ発達モデルを紹介したい(図1)。この図は「身長」や「動作の習得」、「力強さ」などの要素がどの年齢で発達するかを表したモデル図だ。

図1 ジュニア期の体力発達モデル(宮下、1980)

例えば、11歳までは様々な運動で多くの動きを身につける時期である(図中:動作の習得)。12-14歳では身につけた基本的運動スキルを野球の動きに転化する時期(図中:ねばり強さ)。15-18歳ではウエイトトレーニングなどの、いわゆる負荷の高いトレーニング(図中:力強さ)、そして19歳以上ではより競技に特化したトレーニングを積む。
参考:ピッチングは何歳で教えたらいいの?子どもが上達するメカニズムとは
このモデルは一般的にこの時期にこのようなことをすれば良い、という指標にはなるが、前述したように発育・発達には個人差がある。今、指導者に求められることは、個々の成長段階を考慮した上でトレーニングを考えなくてはいけない、ということだ。

個々の成長段階に合わせたトレーニング計画

ジュニアアスリート指導の専門家に依頼しなくとも家庭やチームで比較的簡単にそのトレーニング計画を検討することは可能だ。それは子どもの身長を定期的に記録することから始まる。子どもの身長から成長曲線を作成することによって子どものトレーニング計画を分けることができる。

図2は、1年でどれくらい身長が増えたのかをグラフにした「年間身長発育曲線」と呼ばれるものである。
図中に記したが、2~3歳以外で身長の伸び率が高い時期をTOA(Take off Age)、年間で身長の増加量が最も高くなる時期をPHVA(Peak Height Velocity Age)、身長の増加量が1センチ未満になる時期をFHA(Final Height Age)と言い、それぞれの時期間を4つのパートに分けた。

図2 ジュニア期における年間身長発育曲線(「新・日本人の体力標準値〈2〉」内のデータより作図)

野球に関わらずすべての競技において言えることだが、第一段階は技術や戦術よりも基本的運動スキルのバリエーションに富んだ練習を多く取り入れるべきだ。例えば、「なげる・とる」「うつ」「はしる」の動きをやや多めにいれる程度で良い。
最も重要なのは、第二段階に入るタイミングを見逃さないようにすることだ。図2をみるとTOAに入る直前に身長の伸び率が一度落ちているのがわかる(図中赤丸で標記)。この伸び率の一時的な低下が、第二段階に入るタイミングを見極める指標になるだろう。
第二段階では筋骨格、臓器などが急激に発達し身長が伸び始める時期になる。この時期は、筋力自体未発達なため、持久的なトレーニングを多く取り入れる必要がある。

持久的トレーニングは時間をかけて取り組もう

持久的な能力を上げるためには、「低強度で、長時間」運動することが必要だ。筆者が指導した選手の例であるが、まずは心拍数を記録しながらの持久力テスト(乳酸カーブテスト)を行ったあと、その選手にとって持久力トレーニング時に最適な心拍数を伝える。選手一人一人にその心拍数を保ちながらの持久走を1週間に400分という課題を与えている。飽きがこないように走るだけではなく、トレッキング、自転車、水泳など内容に幅を持たせてあげた方がよいだろう。
参考:体力向上って野球の上達にどう繋がる?真のメカニズムとは

急激な成長期には運動能力の低下が起こりやすい

この時期は、急な成長に伴う一時的な運動能力の低下が起こりやすいので注意が必要だ。体の急激な発達にうまく神経が適応できないことが原因と言われている。
ある選手の例では、それ以外にも柔軟性や筋力が低下したケースもあった。この状況は競技力パフォーマンス低下にもつながるため、仮に保護者やコーチがこの知識を持ち合わせていない場合、単純に練習量を増やしたり負荷を強くしたりするかもしれない。そうなると怪我のリスクが増えてしまう。
時期的にしっかりと技術・戦術練習に時間を費やしたい気持ちはわかるが、第二段階に入っている選手にはそれらの量をやや減らし、その分持久的トレーニング、自重のトレーニング、動的・静的ストレッチの時間帯を増やした方がよいだろう。
このように、少年野球や、中学校・高校野球の監督・コーチが、選手一人一人の年間身長発育曲線を作成し、全体練習を計画しながらも「個別練習」としてそれぞれの成長に合ったプログラムを提供することが競技力向上につながるだろう。

遠山健太(とおやまけんた)
株式会社ウィンゲート代表取締役、一般社団法人健康ニッポン代表理事。全米ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)の資格を保持。ワシントン州立大学教育学部卒業。東海大学スポーツ医科学研究所、国立スポーツ科学センターでのトレーナー経験を経て、全日本フリースタイルスキーチームのフィジカルコーチを2018年まで務める。現在は子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」を展開している。

【リトルアスリートクラブについて】
  http://little-athlete.com/

引用:
1.新・日本人の体力標準値〈2〉 首都大学東京体力標準研究会 (編集) 不昧堂出版(2007/08)
2.ベースボールマガジン社 コーチングクリニック2016年3月号「成熟度を考慮したトレーニング」の期分け 星川精豪
3.ベースボールマガジン社 コーチングクリニック2014年3月号 「パフォーマンスと傷害予防のためのトータルコンディショニング」星川精豪、広瀬統一
4.教え込む指導が、子どもの「成長可能性」を奪っている,小俣よしのぶ,https://muster.jp/course/900/2/
5.子どもに「体力」をとりもどそう―まずはからだづくりだ!宮下充正、杏林書院、2007年

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