プロ野球での活躍に誕生月の影響あり!?ドラフト前にデータで検証

今、野球人気の低下や競技人口減少が深刻な問題となっている。しかし少年野球選手の多くは「将来プロ野球選手になりたい!」という夢を持って野球をやっているだろう。
では、プロ野球選手になる人にはどのような特徴があるのだろうか?今回は、子どもの運動能力向上に関する研究を行っている、東京農業大学の勝亦陽一氏とともに子どもの成長と野球の上達について考察していこう。

目次:プロ野球での活躍に誕生月の影響あり!?
プロ野球選手は4~6月生まれが多い
早生まれの方がタイトルを獲得する?!
プロ野球で「早生まれの大逆転」が起こる3つの理由

プロ野球選手は早生まれが少ない?!

プロ野球選手(2238人)の生まれ月には偏りがあり、4~6月生まれの選手数は1~3月生まれ(早生まれ)の選手数の2.25倍だ(図1)。高校生のときにドラフトで指名された選手に限れば、4~6月生まれの選手数は早生まれの選手数の2.82倍となる。本調査で対象とした選手と同年齢の日本人に生まれ月の偏りはない(2)。これらの結果は、プロ野球選手を目指している早生まれの球児にとっては受け入れ難い事実である。

※データは1965年から1997年に生まれたプロ野球選手を調査

図1 プロ野球選手の生まれ月分布。早生まれの選手が少ない傾向にある

プロ野球選手の生まれ月が偏っている理由

日本では学校教育法により、4月1日を学年の切り替え日とする学年制が取り入れられているため、同学年内の生徒には暦年齢差がある。極端な例だが、生まれたばかりの0歳児(4月1日生)と、歩行ができるようになった1歳児(4月2日生)はいずれ同学年の生徒になる。同学年内の暦年齢差は,特に幼少期において身体の大きさや運動能力の個人差に影響する。

もちろん、それらの個人差は年齢経過とともに小さくなり、男子であれば高校生、女子であれば中学生くらいに消失する。しかし、4~6月生まれは幼少期に運動能力や技能に対する有能感を得ることができる。親やコーチなど他者からの高評価と相まって、野球好きになる、野球を継続する、自主的に練習する、強豪校に進学するといった競技力向上に繋がる好循環を生む
一方、早生まれはその逆、つまり悪循環に陥る可能性がある。このような環境の相違がプロ野球選手の生まれ月が偏っている理由の1つと考えられている。

4~6月生まれの好循環は高校卒業まで

プロ野球選手になったとしても、すべての選手が活躍できるわけではない。図2に最優秀防御率、首位打者などのタイトルを獲得した選手の生まれ月を調査した結果を示す。これは、それぞれの期間の中でどのくらいの割合の選手がタイトルを獲得したのかを表している

※データは1965年から1997年に生まれたプロ野球選手を調査

図2 生まれ月別のタイトル獲得者の割合。早生まれの方がタイトルを獲得する確率が高い

各期(3ヶ月)のタイトル獲得者数をその期の選手数で除した値(割合)は、1~3月生まれが14%であり、4~6月生まれの8%よりも統計的に有意に低い値だった。入団した人数は少ないものの、タイトルを獲得する確率は早生まれのほうが高い、つまり「早生まれの大逆転」が起こるということだ。

プロ野球で「早生まれの大逆転」が起こる3つの理由

1.早生まれは成長の伸びしろ可能性大!?

早生まれの選手は同学年内において暦年齢が低いため、身長、筋力、パワーといった身体資源の発育やトレーニング効果に関して、4~6月よりも「伸びしろ」が大きい可能性がある。身体の成長が同級生に追いつく高校生時や高校卒業後から、早生まれ選手の試合出場の機会が増え、野球に対する自信も深まり野球のパフォーマンスが急激に向上する選手は数多くいる。
プロ野球選手においても,高校から投手を始めたソフトバンクの千賀滉大投手(1月30日生)、高校生の時は控え投手だった黒田博樹元投手(2月10日生)などが高校卒業後に飛躍した早生まれ選手の例として挙げられる。

2.不利な環境で磨かれた心技体!

早生まれ選手の周りには、自分よりも上手な見本となる選手が多くいる。身体の大きさは勝てないけど技術は負けたくない、トレーニングで追いついてやるという選手もいるだろう。その過程で負けん気やハングリー精神といったメンタル面が養われる可能性がある。
例えばプロ野球選手の中でも身長が高くないヤクルトスワローズの青木宣親選手(1月5日生)は、打撃技術と対応力でメジャーリーグでも活躍した早生まれの代表的な選手だ。夏の甲子園を沸かせた金足農業高校の吉田輝星投手(1月12日生)(3)も技術に長けた早生まれの選手だ。
参考:金足農・吉田輝星投手の球質を公開!プロ投手を上回るホップ成分とは!

3.4~6月生まれ選手の過大評価

4~6月生まれは、野球強豪中学や高校で活躍する選手が多くいる。全国大会などの活躍を通して、各球団のスカウトにアピールする機会にも恵まれるため、ドラフトで指名される可能性は高まる。
しかし身長、筋力、パワーといった身体資源には生まれ月による相違はないはずなので、本来活躍する選手の割合はどの生まれ月も同程度になるはずだ。つまり、4~6月生まれの選手数が他の月よりも多いため、タイトルを獲得する選手の割合が低いと考えることもできる。もしかすると、優れた競技成績を残した4~6月生まれは過大に評価されてドラフトで指名されている可能性もある。

個々の身体発育を考慮した指導を

今回は生まれ月からプロ野球選手の特徴をみてきた。野球をする子どもを持つ親御さんやコーチは、4~6月生まれ、早生まれ、それぞれの特徴を理解することが重要だろう。さらに、指導現場では選手の生まれ月を把握し、それぞれの身体発育を考慮した指導をすることも必要だろう。
これからクライマックスシリーズや、ドラフトなど盛り上がりを見せるが、「生まれ月」という新たな視点で選手を見てみるのも面白いかもしれない。

引用:
(1)データは「オフィシャルベースボールガイド」より算出
(2)「厚労省データ」より算出
(3)データは「報知高校野球2018年9月号」より

勝亦陽一(かつまたよういち)
東京農業大学応用生物科学部 准教授。野球の能力に影響する環境要因・生まれ月・競技開始年齢・兄弟構成・練習頻度、などの調査研究等を行っている。中・高校生向けのトレーニング指導や講演(「考えてバッティングをするための科学的アプローチ」等)も多数行っている。
【勝亦氏のプロフィールはこちら】http://yo1walker.wixsite.com/katsumata-yoichi
【勝亦氏のTwitterはこちら】https://twitter.com/Katsumata_Yo

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