ホップ成分が大きい速球は空振りを奪いやすいって本当!?

今、ひそかに注目を浴びつつあるのが速球の「ホップ成分」だ。これは、トラックマンで取得できるデータのひとつで、速球の「球質」を客観的に評価できる指標である。
注目されはじめた理由のひとつが、今夏甲子園を沸かせた金足農・吉田輝星投手だ。

吉田投手の速球に対し、相手打者は「漫画のようなノビ」と称した。
その「球質」を分析してみると、高校生平均はおろかプロ投手の平均をも上回る「ホップ成分」だとわかったのだ。
参考:金足農・吉田輝星投手の球質を公開!プロ投手を上回るホップ成分とは!

このデータは、これまで主観で語られてきた「ボールのノビ」を客観的な指標で球質を評価できることで大きな注目を集めている。
今回は、このホップ成分の大小が打者に与える効果を紹介していきたい。

目次:ホップ成分が大きい速球は空振りを奪いやすい!?
ホップ成分が打者に与える影響とは!
「良い速球」の定義
「球質」だけでなく「球速」も重要

ホップ成分が大きいと空振りが増える?!

まず、「ホップ成分」とはなにかを整理する。トラックマンでは「ボール変化量」というデータを測定できる。詳しくは割愛するが、回転の影響を受けてボールが何センチ変化したかを測定したものである。ボールが実際に浮き上がることはないが、ほとんどの速球はバックスピンで上方向の変化をもつ。そのため、ボール変化量の中でも上方向の変化量を示すホップ成分は速球において非常に重要となる。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~

では速球のホップ成分はどんな効果があるのだろうか。MLBの2016年~2018年前半戦の全速球のデータから、ホップ成分とイベントの関係をみてみる(図1)。

図1 ホップ成分とイベント割合の関係。ホップ成分が大きくなると空振りが増加する

図をみると、ホップ成分が大きくなるにつれて空振りが増加していることが分かる。ホップ成分が大きくなると、同じように投げた平均的なボールよりも上にボールが到達することとなる。打者は普段見慣れた速球の軌道を予想して打ちに行くと、ボールの下を振ってしまい空振りになるのだろう。MLBでもトップクラスのホップ成分を誇るカーショウ投手(ドジャース)は、速球で多くの空振りを奪っている。

また、ゴロ割合の関係をみると、逆にホップ成分が小さくなるにつれて増加している。同様にホップ成分が小さくなると、打者が予測している地点よりも下にボールが到達するため上っ面を打ってしまいゴロが増えるということだ。

空振りの効果、ゴロの効果

速球のホップ成分の大小は、打者の結果に対して影響を与えていた。では、ここで一旦どんなボールが「良い速球」なのかを考えてみたい。

投手が打者に対すると、以下のいずれかのイベントが発生する。これらのイベントはそれぞれアウトになる確率が異なる。言い換えると、イベントの性質によって価値が違うということだ(表1)。

表1 打者のイベントとアウトの確率(2017年MLBデータ)
イベントアウトの確率
三振約100%
内野フライ約98%
ゴロ約75%
外野フライ約73%
ライナー約37%
四死球0%

三振だとほぼ100%アウトを奪うことが出来る。バットとボールが当たらなければ基本的に何も起こらないため、空振りを狙えるボールは「最も良い」ボールと言って良いだろう。「ホップ成分が大きくなると空振りが増える」というデータが示すように、MLB平均をも上回る53センチホップ成分を記録した金足農・吉田投手はやはり多くの三振を奪っていた。

一方で、ゴロは三振ほどではないものの外野フライやライナーよりもアウトを奪え、長打も少ない。失点のリスクを抑える上では、空振りほどではないにせよゴロを打たせるようなボールも「良い」ボールと言って良いかもしれない。
ゴロの割合はホップ成分が小さくなるほど急増する。空振りを量産するようなボールを投げることが難しい場合、このようないわゆる垂れ球で勝負するのも一つの手段であろう。

「球質」だけでなく「球速」も重要

ここまで速球の「ホップ成分」にフォーカスして打者に与える影響を考えてきた。ホップ成分は大きくなると空振りが増加し小さくなるとゴロが増加するという結果は、感じていたイメージに近い人も多かったかもしれない。ただし、今回のデータは「球速」という変数を考慮できていない。トラックマンの普及によって「球質」に注目がいきがちだが、実は球速が与える影響も非常に大きい。今回は割愛するが、球速と球質を組み合わせた考察もゆくゆく紹介していきたい。

次回は今シーズンのメジャーリーガーたちのデータを見ながら「一発病」という言葉について考察していく。少々難解だったかもしれないが、今回の内容もイメージしながら楽しんでほしい。

Featured Posts