K.ジャンセン分析 最強クローザーのカットボールはもはや…!!!

2017年のワールドシリーズでは惜しくも敗れたものの、ナ・リーグ最高勝率を記録したドジャースも、今シーズンを象徴するチームの一つであったといえるでしょう。
タレント揃いの投手陣の中でもK. ジャンセン投手(以下、ジャンセン)の存在感は群を抜いていました。

ダルビッシュ、前田の両日本人投手の登板もあり、注目していたファンの方のなかでも、ジャンセンの投球に魅了された方も少なくないことでしょう。
今回は、ジャンセンの今シーズンを振り返ってみたいと思います。

ジャンセンのリスク管理能力

圧倒的な完全アウト率

まずは、ジャンセンのリスク管理能力を探っていきます。
リスクの考え方は、以前のコラムでも紹介したように、外野フライよりもゴロ、ゴロよりも三振、といったように、よりアウトになる可能性が高いイベントを評価します。
※参考:イベントのリスクからみる野球の本質

図1に、ジャンセンの2017年のリスク管理能力を示しました。打者と対戦した時に、どの割合でイベントが発生したかをナ・リーグ平均と比べています。図1をみると、ジャンセンは完全アウト割合が圧倒的に高いことがわかります【図1】。

図1 ジャンセンのリスク管理能力

ナ・リーグ平均の2倍の完全アウト率を記録しており、なんと約半数の割合で三振か内野フライに打ち取っています。
更には、四死球が少ないのもジャンセンの特徴です。リスク割合はリーグ平均の半分以下となっており、打ち崩すのは容易でないことがわかります。

このデータだけでも非常に凄みを感じるジャンセンですが、これほどに圧倒的な投球を続けるジャンセンのボールの特徴を紐解いていきたいと思います。

各球種の球速と投球割合

超高速カットボールの投球割合はなんと9割

まず、ジャンセンの球種ごとの球速と投球割合をみていきます【表1】。

表1 各球種の球速と投球割合
球種平均球速
(km/h)
平均球速
(%)
最高球速
(km/h)
投球割合
(%)
4シーム153
(150)
100
(100)
157
(155)
2
カットボール150
(142)
98
(95)
157
(148)
90
スライダー134
(136)
88
(91)
140
(143)
8

カッコ内は2017年のMLB平均値

4シームの球速はMLB平均とさほど変わらないものの、カットボールが150km/hと非常に高速であり、MLB平均の4シームと同じであることがわかります。
また、投球割合をみるとなんと投球の9割がカットボールとなっています。

各球種のボール変化量

もはや左投手の4シーム!

ジャンセンは投球割合の9割がカットボールでした。カットボールが来るとわかっているのに、なぜ打たれないのか。その秘密はボール変化量にありました。
図1に今シーズンのジャンセンの各球種のボール変化量をMLB平均と比較しました(薄色はMLB平均)。

図2 各球種のボール変化量

図2をみると、カットボールの異彩さが伺えるでしょう。
なんとジャンセンのカットボールは、MLB平均の4シームよりもホップしながら、MLB平均のスライダーよりも大きく横にスライドしているのです。
昨シーズンと比較しても、横変化が更に大きくなっており、まさに異次元のボールといえます。
参考:世界に衝撃を与えた最強クローザー(ジャンセン編)

MLBを見渡しても、このようなカットボールを投球する投手は見当たりません。
それもそのはずです。ボール変化量の数値を細かくみてみると、ジャンセンのカットボールは、左投手の4シームに近い変化をみせていたのです【表2】。

表2 各球種のスピンレートとボール変化量
球種スピンレート縦変化
(cm)
横変化
(cm)
4シーム2352
(2250)
47
(43)
25
(21)
カットボール2602
(2333)
47
(25)
-17
(-5)
スライダー2394
(2362)
-1
(9)
-19
(-12)
※MLB左投手4シーム平均222643-21

カッコ内は2017年のMLB平均値

ジャンセンのカットボールは、左投手の4シームに近い変化をしています。特に、ホップが大きい左投手の4シームに、変化量が酷似していました。
例を挙げると、元中日のチェン投手(現オリオールズ)です。ジャンセンのカットボールは、日本のファンにもなじみが深い速球派左腕の4シームのような軌道を描いていたのです。

言わずもがなジャンセンは右投手です。右投げから繰り出されるこのボールは誰も見たことのない、まさに現代の魔球といえるのでないでしょうか。

ジャンセンに攻略方法はあるのか

ジャンセンのカットボールは、MLBでも唯一無二なボールであることがわかりました。
ではジャンセンの攻略方法はないのでしょうか。

アストロズはワールドシリーズ第5戦で、シーズン無敗だったジャンセンに土を付けました。また、第2戦でもジャンセンを打ち砕き、延長の末勝利しました。
この両試合とも、勝負を決めたのは本塁打でした。

先ほどの図1をみるとわかるように、ジャンセンは打者と対峙した時に、半数近くの割合で、完全アウトを奪います。また、ゴロが非常に少ないのも特徴です。つまり浮き上がるような軌道のカットボールに対して打者はほとんどボールの下を振ってしまっていると推察されます。

つまり、逆に考えると、打者は打球の角度をつける努力をせずとも、「打球の角度はつきやすい」ともいえるのです。
角度のついた打球をスタンドまで運ぶには、高い打球速度が要求されます。奪三振の多いジャンセン相手だからといって当てに行くのでなく、フルスイングで本塁打を狙うことが、活路を見出す唯一の方法かもしれません。

今シーズンは残念ながら世界一とはなりませんでしたが、Baseball Geeksでは来シーズンもこの最強クローザーの活躍に注目していきたいと思います。

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