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MLB

アメリカ代表の分析(ロアーク投手編)



目次
ロアーク投手のプロフィール
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
球種毎の投球割合と球速差
球種毎の変化量
球種毎のリリースポイント
球種毎のカウントとゾーンからみた特徴
ロアーク投手への対策

今回はWBC2017にアメリカ代表として参加しているタナー・ロアーク投手(以下ロアーク投手)について分析します。準決勝の日本代表戦での先発が予想されている好投手です。

 

ロアーク投手のプロフィール

アメリカ合衆国イリノイ州ウィルミントン出身のメジャーリーガー。右投げの先発投手で現在はMLBワシントン・ナショナルズ所属しています。2016年シーズンは16勝をマークするなど、アメリカを代表する投手の一人です。

投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)

メジャーリーグ平均に近い投球スタイル!

【表1】をみると、ロアーク投手の各球種のゴロ割合をみると、スライダーが高く、4シームが低いことがわかります。しかし、他の球種や、他の成績はメジャーリーグ平均に近く、ロアーク投手の投球スタイルはメジャーリーグ平均に近いスタイルといえます。

表1 各球種のスイング割合、空振り割合と打球の種類
球種スイング割合
(Sw Rate)
空振り割合
(Whf/Sw)
ゴロ割合
(GB/BIP)
ライナー割合
(LD/BIP)
フライ割合
(FB/BIP)
4シーム37%
(46%)
21%
(19%)
24%
(36%)
35%
(28%)
32%
(27%)
2シーム40%
(44%)
14%
(13%)
55%
(56%)
25%
(24%)
16%
(16%)
スライダー47%
(49%)
36%
(36%)
59%
(46%)
20%
(25%)
18%
(21%)
チェンジアップ50%
(54%)
31%
(33%)
55%
(50%)
23%
(24%)
15%
(20%)
カーブ49%
(40%)
25%
(32%)
44%
(51%)
30%
(24%)
21%
(20%)

カッコ内はMLB平均

球種毎の投球割合と球速差

2シーム主体の投球でゴロを積み重ねる

【表2、3】をみてみます。各球種の球速はほぼメジャーリーグ平均と同様です。投球割合をみると、2シームの投球割合が非常に高く、ロアーク投手の投球は2シームが中心であることがわかります。また、対右打者と対左打者で投球の組み立てに違いがあります。

■右打者
2シームとスライダーが投球の中心となっています。

■左打者
2シーム、チェンジアップ、カーブが投球の中心です。スライダーは投球割合を大幅に減らしています。

表2 対右打者における各球種の球速
球種平均速度(km/h)平均速度(%)最高速度(km/h)投球割合(%)
4シーム150
(149)
100
(100)
153
(154)
3
2シーム150
(149)
100
(100)
155
(153)
58
スライダー139
(136)
92
(91)
151
(144)
25
チェンジアップ137
(137)
91
(92)
142
(144)
4
カーブ126
(125)
84
(84)
150
(135)
9

カッコ内はMLB平均

表3 対左打者における各球種の球速
球種平均速度(km/h)平均速度(%)最高速度(km/h)投球割合(%)
4シーム149
(149)
100
(100)
152
(154)
3
2シーム149
(149)
100
(100)
154
(153)
60
スライダー138
(136)
92
(91)
146
(144)
5
チェンジアップ136
(137)
90
(92)
149
(144)
16
カーブ126
(125)
84
(84)
130
(135)
17

カッコ内はMLB平均

ゴロ割合の高いスライダーは右打者にのみ投球し、ゴロ割合の低い4シームはどちらもほとんど投球されません。投球の中心はやはり2シームで、ロアーク投手の投球スタイルは2シームでゴロを多く積み重ねるスタイルといっても良いでしょう。

球種毎の変化量

平均的な変化量から少しずつのズレ

【図1、2】をみると、ロアーク投手のボールの変化量はメジャーリーグ平均に近いものの、少しずつ違いがあるといえます。【表4、5】とあわせて球種ごとに変化量の特徴をみていきましょう。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~

図1 対右打者へのボールの変化量
図2 対左打者へのボールの変化量

※薄色は各球種のMLB平均

4シーム

メジャーリーグ平均と比べてホップ方向とスライド方向に変化しています。ゴロ割合が低く、フライ割合が多い要因の一つです。

2シーム

横の変化量は平均的ですが、ややホップ成分が大きいボールです。

スライダー

縦の変化、横の変化共にやや変化の小さいボールといえます。

チェンジアップ

メジャーリーグ平均よりもシュートが大きく、落差の小さなボールです。

 

カーブ

縦の変化、横の変化共にメジャーリーグ平均より変化の大きなボールです。

表4 対右打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2137
(2253)
49
(45)
13
(23)
2シーム2066
(2159)
41
(34)
36
38
スライダー2010
(2264)
16
(13)
-1
(-5)
チェンジアップ1808
(1787)
32
(26)
42
34
カーブ2569
(2413)
-21
(-15)
-23
(-17)

カッコ内はMLB平均

表5 対左打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2101
(2253)
49
(45)
14
(23)
2シーム2049
(2159)
38
(34)
37
38
スライダー2064
(2264)
13
(13)
-4
(-5)
チェンジアップ1845
(1787)
28
(26)
41
34
カーブ2589
(2413)
-20
(-15)
-23
(-17)

カッコ内はMLB平均

このように、ロアーク投手の変化量は、メジャーリーグ平均に近いものの少しずつそれに特徴があるため、打者はほんの少しのズレを感じて凡打を積み重ねているかもしれません。

球種毎のリリースポイント

ややクロス気味にステップ!? ロアーク投手の武器の一つ!

【表6、7】をみると、リリースの高さは平均的であることがわかります。一方でリリース横がメジャーリーグ平均を大きく上回っています。つまりややスリークォーター気味の投球フォームであることが読み取れます。

また、ロアーク投手はクロスステップ気味に投球しており、リリースポイントがさらに三塁よりかつ遠いため、打者は横の変化をより感じやすくなります。このフォームの特徴もロアーク投手の武器の一つであるといえます。

表6 対右打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム181
(180)
73
(50)
180
(188)
2シーム180
(178)
74
(54)
180
(187)
スライダー180
(181)
79
(56)
173
(178)
チェンジアップ177
(179)
80
(54)
180
(188)
カーブ182
(187)
87
(53)
167
(173)

カッコ内はMLB平均

表7 対左打者における各球種のリリース位置
球種 リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム183
(180)
75
(50)
179
(188)
2シーム181
(178)
78
(54)
179
(187)
スライダー179
(181)
83
(56)
173
(178)
チェンジアップ179
(179)
88
(54)
180
(188)
カーブ182
(187)
92
(53)
167
(173)

カッコ内はMLB平均

球種毎のカウントとゾーンからみた特徴

精度の高い投げ分けを実現。クレバーな投球の神髄!

随所に高いコマンド力(狙ったところに投球する能力)を感じることができます。ロアーク投手の最大の武器は、このクレバーな投げ分けにあるといっても過言ではありません。球種ごとにみていきます。

4シーム

対右打者、対左打者のいずれに対しても、高めに投球していることがわかります。投球割合は高くないものの、伸びが強いボールであるため打者は手を出さないように注意が必要かもしれません。【図3、4】

表8 対右打者へのカウント別投球割合
表9 対左打者へのカウント別投球割合
表10 対右打者へのカウント別球速
表11 対左打者へのカウント別球速
図3 対左打者へのボールの投球割合
図4 対右打者へのボールの投球割合
2シーム

ロアーク投手の投球の中心です。どのカウントでも多く投球しています。特にボールが先行し打者有利となったカウントでは8割ほどの割合で投球しています。【表12、13】
投球ゾーンはすべてのコースに投げ分けを実現しており、精度の高さを感じます。【図5、6】
追い込んだ後はスピードを速くしていることもみてとれ、非常にクレバーな投球をしているといえます。【表14、15】

表12 対右打者へのカウント別投球割合
表13 対左打者へのカウント別投球割合
表14 対右打者へのカウント別球速
表15 対左打者へのカウント別球速
図5 対左打者へのボールの投球割合
図6 対右打者へのボールの投球割合
スライダー

右打者中心に投球しています。ボールが先行したカウントではほとんど投球していないことも特徴です。【表16】
ゾーンは一貫して右打者の外角低め(左打者の内角低め)へ投球しています。
特に右打者に対しては非常に精度が高く、内角にはほとんど投球されません。【図7、8】

表16 対右打者へのカウント別投球割合
表17 対左打者へのカウント別投球割合
表18 対右打者へのカウント別球速
表19 対左打者へのカウント別球速
図7 対左打者へのボールの投球割合
図8 対右打者へのボールの投球割合
チェンジアップ

左打者に多く投球しています。早いカウントでの投球が多く、追い込んだ後はあまり投球していません。コースは外角低め中心で、内角にはほとんど投球されません。【表21、図10】
右打者に対しては追い込んだ後のみの投球で、低め中心に投球されています。【表20、図9】

表20 対右打者へのカウント別投球割合
表21 対左打者へのカウント別投球割合
表22 対右打者へのカウント別球速
表23 対左打者へのカウント別球速
図9 対左打者へのボールの投球割合
図10 対右打者へのボールの投球割合
カーブ

低めへの投球割合が高い球種といえます。【図11、12】
投球されるカウントは、右打者に対しては追い込んだ後で、左打者に対しては、ボールが少ないカウントとなっています。【表24、25】

表24 対右打者へのカウント別投球割合
表25 対左打者へのカウント別投球割合
表26 対右打者へのカウント別球速
表27 対左打者へのカウント別球速
図11 対左打者へのボールの投球割合
図12 対左打者へのボールの投球割合

ロアーク投手への対策

ボール球の見極めと、逆方向への打撃。日本野球で世界一へ王手をかけろ!!

WBC2017の準決勝では先発が予想されるロアーク投手。日本代表は如何にして対策するべきでしょうか。ここでロアーク投手の特徴を整理しておきます。

ロアーク投手の投球の中心は2シームです。高い投球割合を誇りますが、球速は特筆すべきものではありません。変化量はすべての球種でメジャーリーグ平均から微妙にズレており、クロスステップから繰り出されるボールに、打者は少しずつ芯を外され凡打を繰り返します。
 

また、非常に制球が良く、失投が望めるタイプではありません。チームに安定して勝利をもたらす能力を持っている投手です。

 

そこで、攻略のヒントはカウント別投球割合にあると考えます。ロアーク投手はボールが先行し打者有意なカウントになった場合、8割の確率で2シームを投球してきます。球速は平均的であるため、思い切って狙いを定めるべきだと考えます。
 

また右打者に対してスライダー、左打者に対してチェンジアップを外角低めの厳しいコースに投球してきます。

2シームを狙うにあたっても、ひきつけて逆方向への打撃を心掛けることが、厳しいコースの変化球を見極めることにもつながるのではないでしょうか。

厳しいコースを攻める分、見極めさえできれば、打者有利なカウントを作ることも可能でしょう。2シームを逆方向へ!粘り強い攻撃を心掛けましょう。

まとめ:ロアーク投手対策法
クロスステップからの微妙な変化に要注意!
ボール先行時の2シームを狙え!
ひきつける打撃でボール球の見極め徹底。

ボール球の見極め!逆方向への打撃!一流メジャーリーガーには日本らしい攻撃で粘り強く攻めましょう。
全員野球こそ日本のお家芸!さあ世界一奪回へ!!

※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)

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Baseball Geeks編集部