編成からみえてくる各球団のドラフト戦略

10月25日に行われたプロ野球ドラフト会議(以下、ドラフト)。誰がどの球団に指名されたかということに大きな注目が集まった。一方、各球団は現在の選手編成や育成戦略に基づいて指名選手を決定しているはずだ。
そこで、日本シリーズを戦っているソフトバンクとカープ、安定した成績を残す日本ハムについて、年齢構成および出身身分からドラフト戦略を探った。

目次:編成からみえてくる各球団のドラフト戦略
ソフトバンクはバランスのよい年齢構成
広島は育成を見据えた高校生獲得に徹する!
日本ハムは一貫した若手中心のチーム構成
ドラフトを通して見えたチームの戦略とは

年齢構成から見るチームごとの戦略とは?

各球団の年齢構成を表1に示す。値は各球団の支配下登録全選手(育成選手を除く)を100%としたときの各年齢層の割合を示している。18~22歳の割合が多い球団は、高校生を多く指名している球団となる。
さらに図1に今回注目した広島、ソフトバンク、日本ハムの3チームの年齢構成を示した。

1、ソフトバンク~バランスのよい年齢構成~

例えばソフトバンクは18~22歳の選手と33歳以上の選手の割合が高い球団だ。一方広島は、各年齢層の割合がいずれも平均的である。また、日本ハムは、18~27歳の割合の合計が73%と12球団で最も高く、選手の平均年齢も低い若手選手中心の球団である。

表1 年齢構成および平均年齢の球団間比較
図1 3球団の年齢構成比較。ソフトバンクはバランスのよい年齢構成が特徴

表2は5年目以内と6年目以上、投手と野手(捕手を除く)別に高卒選手の割合を示している(高卒選手/(高卒選手+大卒・社会人)。
ソフトバンクは投手、野手いずれも高卒選手の割合が高く、特に5年目以内の選手については高卒選手の割合が高い傾向だった。さらにFAやトレードにより内川などの他球団から選手を補強し、若手からベテラン選手まで年齢層がバランスよく構成されている

今年のドラフトでは、野手は例年通り高校生のみ4名を指名した。一方、投手は戦略を変更し大卒・社会人の投手のみを指名した。背景には5年目以内の高卒投手で主力として活躍している投手がいないこと、また森、大竹、高橋、石川など大卒・社会人の投手が活躍していることがあるのかもしれない。

表2 高卒選手の割合における球団間比較

2、広島~育成を見据えた高校生獲得に徹する!~

広島は出戻りの新井はいるが、FA選手の獲得による強化はほとんどない。主力野手は、高卒の丸、鈴木、大卒の新井、菊池がおり、出身身分もバランスよく構成されている。
これらの構成をみると球団に合った選手、育成したい選手像が明確にあり、それが実行できているのではないかと推察される。今回のドラフトでも投手3名、内野手2名、外野手2名とバランスよく指名してる。

また、広島は5年目以下、6年目以上いずれも高卒投手の割合が高い球団だ。高卒の今村、中﨑、アドゥワはリリーフ投手として活躍している。一方、大卒投手は他球団より割合は少ないが、ドラフト上位で指名した大瀬良、野村、岡田は先発として活躍している。今回のドラフトにおいても上位で大学生の島内投手、下位で高校生の中神、田中を指名した。

3、日本ハム~若手中心のチーム構成~

日本ハムは年齢層に関わらず、投手は大卒・社会人、野手は高卒が中心であり、一貫したドラフト戦略があると推察される。
特に高卒野手の割合は他球団よりも高い傾向だ。日本ハムには中田(大阪桐蔭)、西川(智弁和歌山)、近藤(横浜)、清宮(早稲田実業)など強豪高校出身の野手が多数在籍しており、入団後の早い時期から一軍でプレーをしている。今回のドラフトにおいても、野手は甲子園常連の強豪校から野村(花咲徳栄高校)、万波(横浜)を指名した。

ドラフトを通して見えたチームの戦略

編成や今回のドラフト指名選手をみても、長期的な戦略がみえない球団もある中、上記した3球団からはドラフト戦略が透けてみえてきた。
例えばソフトバンクと日本ハムは、今年も高卒野手を多く指名した。野球では、打者は投手のボールに対して受動的である。アマチュアで結果を残してきた打者でもプロ野球投手に慣れなければ打つことはできない。
育成の観点から考えると、早い段階でプロ野球投手のボールに慣れさせるほうが、選手の潜在能力を引き出すには効果的と考えているのかもしれない。
参考:プロ野球での活躍に誕生月の影響あり!?ドラフト前にデータで検証

一方、投手が投げなくては試合が進行しないように、投手は能動的である。従って、打者が打てないボールを投げる能力があれば、出身身分に関係なく活躍することが可能である。
しかしプロ野球の試合は140試合あり、シーズンを通して投げられる体力が必要だ。従って短期間のトーナメント方式で評価された高校生よりも、リーグ戦や大会が多い大学や社会人投手のほうが「即戦力」として評価がしやすいため、活躍する確率は高いと考えらる。広島が他球団と異なり高卒投手を多く指名できるのは、高卒投手を育成してきた実績と自信があってこそかもしれない。
編成やドラフトの戦略を振り返りながら応援しているチームの特徴をみてみるのも、プロ野球の1つの楽しみ方だろう。
(敬称略)

引用:http://jpbpa.net/register/

勝亦陽一(かつまたよういち)
東京農業大学応用生物科学部 准教授。野球の能力に影響する環境要因・生まれ月・競技開始年齢・兄弟構成・練習頻度、などの調査研究等を行っている。中・高校生向けのトレーニング指導や講演(「考えてバッティングをするための科学的アプローチ」等)も多数行っている。
【勝亦氏のプロフィールはこちら】http://yo1walker.wixsite.com/katsumata-yoichi
【勝亦氏のTwitterはこちら】https://twitter.com/Katsumata_Yo

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