球児必見!自分に最適なバットの選び方

自分にとって最適なバットとは?(写真はpixabayより)

今シーズン途中、西武の中村剛也はバットを変更したことで「ファウルや空振りしていた球にバットが“間に合う”ようになった」(9月18日日刊スポーツより)とコメントしている。
打撃においてどのようなバットを使用するかは打者にとって重要な選択である。自分にとって最適なバットとはどのようなバットなのだろうか?
今回は、バットを選択する際の基準となる「重さ」や「長さ」がスイングや打球にどのような影響を及ぼすのかについて解説する。

目次:バットを選ぶ基準は重さ?振りやすさ?
バットを選ぶ基準となる「振りやすさ」
重さと重心の位置で振りやすさが決まる!
自分に最適なバットの選び方とは?

バットを選ぶ基準となる「振りやすさ」

打者に求められる技術からどのようなバットを選ぶべきかを考えると、バットコントロールがしやすく、かつ打球の速度が最大化されるバットを選択するべきだと言える。これは、多くの得点を取るには、飛距離の長い打球を放つことが必要になるためである。
しかし、実際にはグリップを握った感触や重みのバランス、または素振りしたときの振りやすさやボールを打ったときの打感などから、総合的に感覚の良かったものを選んでいるのではないだろうか。
では、バットを選ぶ際の基準の一つである「振りやすさ」は、バットコントロールや打球速度とどのような関係があるのだろうか

重さと重心の位置で振りやすさが決まる!

軽くて短いバットは振りやすく、重くて長いバットは振りにくいというのは直観的に理解できるだろう。振りやすさはあくまで感覚であるが、力学では「慣性モーメント」という指標で表すことができる。

慣性モーメントって何?

慣性モーメントとは、物体の回転のしやすさ(または、しにくさ)を表す物理量であり、質量に回転半径を二乗したものを掛け合わせたものである。図のように同じ質量のバットでも回転中心に近い位置に重心があれば慣性モーメントは小さくなり、反対に回転中心から遠い位置に重心があれば慣性モーメントは大きくなる
また、回転中心から重心までの距離が同じであっても、質量が違えば慣性モーメントも違ってくる。市販されているバットにトップバランスやミドルバランスなどの表記があるが、これは慣性モーメントの大きさを表しており、トップバランスの方がバットの先端に質量が集まっており、回転させづらいバットであることを意味する(図1)。

図1 同じ質量のバットでも重心位置の違いによって慣性モーメントの大きさが異なる。 重心は物体を1点で支えられる点のことであり、バットの形状や密度によって変化する。

以上のことから、慣性モーメントが小さいバットほど回転させやすいため、軌道のコントロールがしやすく、スイング速度が大きくなると考えられる。慣性モーメントの小さいバットほど芯に当てる技術が向上するかどうかは、科学的には明らかになっていない。しかし、慣性モーメントが大きくなるほどスイング速度が低下してしまうことは多くの研究で証明されている(Fleisig et al. 2002, Smith & Kensrud 2013)。
参考:打球速度を決める運動量とは!バットの質量×スイング速度!

振りやすさ重視のバットは打球速度が低くなる!?

スイング速度の増加はスイング時間の短縮に繋がるため、ボールを見極める時間が長くなりインパクトの精度を高められる可能性がある。したがって、打撃のパフォーマンスを向上させるには、慣性モーメントがより小さいバット(軽くて短いバット)を選択した方が良いということなる。しかしながら、慣性モーメントは物体の質量の分布の違いを表しており、慣性モーメントが小さいバットほどグリップ側に質量が集まっている。そのため、スイング速度とバットに対するボールの衝突位置が同じ場合、慣性モーメントが小さいバットほど衝突部付近の質量が小さい分、ボールにバットが押される影響が大きくなり、打球速度が低くなってしまう(Cross 2009)。

これらのことを考えると、一概に慣性モーメントの小さいバットが良いとは言い切れない。慣性モーメントの大きいバットはスイング速度を低下させてしまう反面、打球速度は低下しづらいという利点がある。また、スイング速度の大きさは筋力とも関係してくるため、筋力が強くスイング速度を落とさずにスイングできる選手は、慣性モーメントの大きいバットを選択した方が打球速度を高める上で有効となる。
参考:打者は体が大きい方が有利!?データで検証!

自分に最適なバットの選び方とは?

バットの選び方として、振りやすさを重視して打率を高めたい場合は慣性モーメントの小さいバットを選択した方が良いだろうし、とにかく飛距離を伸ばしたい場合は慣性モーメントの大きなバットを選択した方が良いかもしれない。中には、重くて長いバットの方が軌道のコントロールがしやすいという選手もいるだろう。バットにはそれぞれの特徴があるため何がベストというものはない。そのため、自分の感覚や目指したい打撃スタイルに合わせて選択することが良いのではないだろうか。

最近では、バットのグリップエンドにセンサーを取り付けることで、スイング速度などのデータを簡易に計測できるようになってきた。打球速度を知りたければスピードガンを使えば計測することもできる。自分の感覚に頼ってバットを選んでも良いだろうが、実際には目的と違ったバットを選択してしまっている可能性もある。目的に合ったバットかどうかを判断するための手段として、このような機器を利用してみるのも良いだろう。

森下 義隆(もりした よしたか)

国立スポーツ科学センタースポーツ研究部研究員。日本女子ソフトボール代表チームの医・科学サポートを担当。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて博士号(スポーツ科学)を取得。バイオメカニクスが専門であり、打撃動作のメカニズムやパフォーマンス評価が主な研究テーマ。

引用:
Fleisig, G., Zheng, N. & Stodden, D. (2002): Relationship between bat mass properties and bat velocity, Sports Engineering, 5(1), 1-8
Smith, L. & Kensrud, J. (2013): Field and laboratory measurements of softball player swing speed and bat performance, Sports Engineering, 17(2), 75-82
Cross, R. & Nathan, A. (2009): Performance versus moment of inertia of sporting implements, Sports Technology, 2, No.1-2, 7-15

Featured Posts