
【ストレートの極意】空振りが取れる速球とは!?

今まで言われてきたストレートの一般論はもう古い!?
もはや配球の組み立ての中心はストレートではなくなっているとデータが示している。しかし必要不可欠な球種であることは間違いなく、ストレートを工夫できたピッチャーには強力な武器となることをハイスピードカメラ映像を用いて解説する。
森本:やはりピッチャーを語る上で絶対に外せない球種はストレートだと思うんですけど、ストレートを投げるピッチャーで神事さんの中で誰が思いつきますか?
神事:藤川球児さん。やっぱり火の玉ストレートで絶対に三振を取るという期待感がありましたね。
森本:ということで、今回はストレートに関して今まで一般的に言われてきたことをデータも踏まえてストレートの定義を見直し、質のいいストレートを神事さんに教えてもらって深めていきたいと思います。
一般的なストレート論
森本:まずは一般的なストレート(速球)の印象を見ていきたいと思います。

・速球は投球の中心
・高めのストレートは長打を浴びる
・伸びるボールは良い
・シュート回転はダメ
・回転数が多いと良いのか
森本:気になった点はありますか?
神事:キャッチャーをやっていたのでサインも「1」が必ずストレートでストレートを中心に配球を考えていたと思います。まずストレートを投げてから変化球を練習するという意味でも基本となるボールがストレートでした。
神事:今はたくさんデータが取れるようになり、これらの理論は本当だったのか?違っていたのか?分かるようになってきました。今回は一般論とデータにはギャップがあるという所を深堀りしていきます。
ストレートは投球の中心?
森本:ストレートは、ほとんどの投手が投げるのでピッチングの中心と捉えている方も多いと思いますがこちらをご覧いただきたいです。

森本:明らかにストレートの減少傾向が見られますね。
神事:結構減ってますよね!!
森本:このままだと30%を切るような勢いですね。
神事:僕の時代なんて感覚的には70%くらいでしたよ。

森本:このようにストレートの投球割合が減っている背景にはどのような理由が考えられますか?
神事:データをたくさん取っていったことで、いろんなことが見えてきたという風に思います。

神事:スプリット、スライダーでは空振りの割合が多い事に気が付きますが、ストレートに関しては19%しかないです。つまり、ストレートは投げても空振りが奪えないボールになっています。

神事:また、ゴロになるかライナーになるかという所では、ゴロにはなりやすくてライナーにもなりやすいです。

神事:さらにフライにもなりやすく、ファールにもなりやすいので、決め球としては使いにくくなっているので他の球種の割合が増えている理由は納得ができるなと思います。

高めのストレートは長打を浴びやすい?
神事:ストレートは空振りが少ない球種ではありますが高めに投げることで他の球種に近い空振り割合となります。


伸びるボールはいいボール?
森本:ホップ成分が小さいボールは空振りは少ない傾向になっていますが、ゴロの割合は高い傾向にあります。

神事:垂れてくるボールになるので、バッターが打ちにいった時にボールの上を叩いてしまってゴロになっています。ゴロもアウトの割合を高めるのでゴロで打ち取ってアウトの取れるボールというのも実はいいボールであるといえます。

森本:画像11を見てみるとシュートしているボールも空振りは多いですね。
神事:シュートしていてもホップ成分が高ければ空振りは奪えるという事になります。

森本:伸びるボールもいいですが、伸びないボールでもアウトを取る方法はあるという事ですね。
回転数が多ければいい?

神事:ボールの回転数だけではボールの変化は決まらなくて、ボールの回転軸も効いています。綺麗なバックスピンで回転していくと揚力は大きくなりますが、回転の軸がジャイロ気味に傾いてくるとボールの揚力が減っていき伸びも少なくなってしまいます。そうなると回転数が多くとも回転の軸が悪くボールは伸びていかないです。

森本:どのように投げれば回転数と回転軸の両立ができるのか、という所を実際にを見ながらみていきたいと思います。

神事:注目したいポイントとしてはリリースの時の指がどうなっているのかです。回転数が上がらないピッチャーの場合はリリースの時に指が伸びてしまう特徴があります。指が伸びてしまうとその分ボールに伝わる力が弱くなってしまい結果的には回転数が高まらないという事になります。また、ボールの中心から指がずれていると回転数が上がらなかったり、回転の軸がジャイロ回転になってしまいます。

森本:別の選手を見てみましょう。

神事:このピッチャーにジャイロ回転ですが、注目してもらいたいのはリリース時の手の方向です。手がキャッチャーの方向を向いてボールに回転を与えられていればいいのですが、やや小指側から出てリリースしている事が分かります。そうなると結果的に回転の軸がジャイロのようになり、ボールの揚力が小さくなってしまいます。

神事:そして、リリース時の指が若干広がっている事に気が付きます。さらに指が伸びながらリリースしている部分があって、いわゆる「プッシュ型」と呼ばれる回転数が高まらないリリースになっています。
森本:ここまで実例を交えてみてきましたが、神事さんの中で回転数と回転軸を両立するために重要なポイントはありますか?
神事:やっぱり重要なのは握りかなと思います。浅く握ってしまうとボールに回転がかかりにくくなってしまい、また、ボールの中心から外れて握ってしまうとそれだけで回転の軸が悪くなってしまうので握りを意識するだけでかなりの改善ポイントになります。
森本:本日はいいストレートを投げるためのさまざまなデータを紹介してきましたが、神事さん、改めていかがでしたか?
神事:ストレートそのものが打たれやすいという前例があってそれを打たれないように工夫できている人は特徴のある持ち球になっているし、改善できるポイントはいくつかあるので、動画をみてアップデートしていってほしいなと思います。
Baseball Geeks編集部