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MLB

ドミニカ代表の分析(ベタンセス投手編)



目次
ベタンセス投手のプロフィール
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
球種毎の投球割合と球速差
球種毎の変化量
球種毎のリリースポイント
球種毎のカウントとゾーンからみる特徴
ベタンセス投手への対策

今回はWBCドミニカ代表のデリン・ベタンセス投手(以下ベタンセス投手)を紹介します。前回大会優勝チームであり、今大会も優勝最有力候補であるドミニカ代表のリリーフエースの一人です。

ベタンセス投手のプロフィール

アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン区出身のメジャーリーガー。右投げ右打ちの速球派リリーフ投手です。

現在はMLBのニューヨークヤンキースに所属しています。3年連続70試合以上に登板しており、2016年シーズンは73試合に登板して奪三振率15.5を記録しました。

投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)

少ない球種も高い空振り率とゴロ率を誇る!

ベタンセス投手の投球の中心は4シームとナックルカーブの2種類です。空振り割合をみるといずれの球種もMLB平均よりも高いことが特徴です【表1】。

また、ゴロ割合をみてもメジャーリーグ平均より高い値になっています。空振りが奪えてかつゴロで打ち取ることも出来るボールを持っていることが、少ない球種でも安定して活躍できる理由の一つです。

 

なお、今回の分析においては、ベタンセス投手の決め球であるナックルカーブをMLB平均と比較する際はカーブの平均値と比較したいと思います。

表1 各球種のスイング割合、空振り割合と打球の種類
球種スイング割合
(Sw Rate)
空振り割合
(Whf/Sw)
ゴロ割合
(GB/BIP)
ライナー割合
(LD/BIP)
フライ割合
(LB/BIP)
2シーム46%
(46%)
33%
(50%)
54%
(36%)
28%
(28%)
13%
(27%)
ナックルカーブ37%
(40%)
50%
(32%)
54%
(51%)
19%
(24%)
19%
(20%)

カッコ内はMLB平均

球種毎の投球割合と球速差

スピードで打者を圧倒!投球の中心はナックルカーブ!

まず各球種の投球割合と球速をみていきたいと思います【表2、3】。

■投球割合
対右打者、対左打者ともに多少はカットボールを投球していますが、ほとんどは4シームとナックルカーブの2球種のみで勝負していることがわかります。またナックルカーブの割合が54~60%と高く、ナックルカーブを中心に投球を組み立てています。

■球速
 球速をみると、4シームの平均球速はMLBの平均値と比べて約10キロも速く、最高球速は164キロと非常に速いボールであることがわかります。

ナックルカーブの平均球速はMLBの平均値と比べて約11キロ速いボールです。ベタンセス投手の4シームとナックルカーブは2球種とも非常に球速が速く、高速球種が大きな武器となっています。

表2 対右打者における各球種の球速
球種平均球速(km/h)平均球速(%)最高球速(km/h)投球割合(%)
4シーム158
(149)
100
(100)
164
(154)
42
カットボール158
(143)
100
(96)
162
(149)
4
ナックルカーブ137
(125)
86
(84)
144
(135)
54

カッコ内はMLB平均

表3 対左打者における各球種の球速
球種平均球速(km/h)平均球速(%)最高球速(km/h)投球割合(%)
4シーム158
(149)
100
(100)
163
(154)
38
カットボール158
(143)
100
(96)
162
(149)
2
ナックルカーブ136
(125)
86
(84)
144
(135)
60

カッコ内はMLB平均

球種毎の変化量

4シームはカット系ストレート!横に大きく曲がるナックルカーブは超高速

次に各球種の変化量を見てみたいと思います【図1、2】【表4、5】。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~

図1 対右打者へのボールの変化量
図2 対左打者へのボールの変化量

※薄色は各球種のMLB平均

4シーム

MLB平均と比べ、ホップ成分は平均的ですが、シュート成分が10cm小さくなっています。打者はややカットボールに近い印象を受けるかもしれません。

ナックルカーブ

MLB平均と比べてみると、ドロップ成分が5~10cm小さく、スライド成分が10cm大きい値になっています。
ベタンセス投手のナックルカーブは縦よりも横に変化するボールであることがわかります。さらに平均球速が136キロと非常に速いため、打者は高速に曲がる印象を受けると考えられます。

表4 対右打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2513
(2253)
47
(45)
13
(23)
カットボール2480
(2275)
36
(32)
-3
(2)
ナックルカーブ2806
(2413)
-5
(-15)
-27
(-17)

カッコ内はMLB平均

表5 対左打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2502
(2253)
45
(45)
15
(23)
カットボール2455
(2275)
34
(32)
-1
(2)
ナックルカーブ2794
(2413)
-10
(-15)
-26
(-17)

カッコ内はMLB平均

球種毎のリリースポイント

高い位置でのリリースで強い威圧感!

続いてリリース位置をみていきます【表6、7】。
 

リリース高はメジャーリーグ平均より約10cmも高い位置です。また、エクステンションも約6cm大きい値です。

つまりベタンセス投手はより打者に近い位置で高いポイントからリリースしているということがわかります。そのため、打者はスピードが速く感じ、ボールの威力を感じると考えられます。

また、ナックルカーブに関しては、ドロップ成分は少ないものの、リリース位置が高いために、より上から曲がってくるように見えるボールになっています。

表6 対右打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム192
(180)
23
(50)
194
(188)
カットボール190
(181)
21
(52)
195
(184)
ナックルカーブ190
(187)
31
(53)
177
(173)

カッコ内はMLB平均

表7 対左打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム189
(180)
26
(50)
193
(188)
カットボール188
(181)
24
(52)
196
(184)
ナックルカーブ192
(187)
32
(53)
177
(173)

カッコ内はMLB平均

球種毎のカウントとゾーンからみる特徴

決め球は必殺ナックルカーブ!

カウント別、ゾーン別の投球割合をみてみます。ベタンセス投手は細かな制球でなくボールの威力で勝負していることがみてとれます。打者はボール球でも振ってしまう、ベタンセス投手はそんな球を投球します。では球種ごとに細かくみていきます。

4シーム  

ボールが先行したカウント中心に投球されています。追い込んだ後は割合が減っています。ゾーンは高めのボール球で空振りを奪う意図を感じます。

表8 対右打者へのカウント別投球割合
表9 対左打者へのカウント別投球割合
表10 対右打者へのカウント別球速
表11 対左打者へのカウント別球速
図3 対左打者へのボールの投球割合
図4 対右打者へのボールの投球割合
ナックルカーブ  

ベタンセス投手の投球の中心となっているボールです。特に追い込んだ後には多く投球しています。右打者には外角低めのボール球に多く投球されています。左打者に対してはややストライクゾーンへの投球も増えています。

表12 対右打者へのカウント別投球割合
表13 対左打者へのカウント別投球割合
表14 対右打者へのカウント別球速
表15 対左打者へのカウント別球速
図5 対左打者へのボールの投球割合
図6 対右打者へのボールの投球割合

ベタンセス投手への対策

ボールの見極めが最大のポイント!威力あるボールに振り負けるな!

ここまでベタンセス投手の分析をしてきましたが、威力あるボールを打ち崩すのは容易ではありません。対策を練るにあたって特徴を整理してみます。

ベタンセス投手の投球の大半は4シームとナックルカーブの2種類で組み立てられています。しかし両球種とも非常に高速なボールで、変化にも特徴があります。

ベタンセス投手はリリーフ投手であり、短いイニングで打ち崩すには明確な狙いを絞る必要があると考えます。右打者と左打者にわけて対策を考えていきます。

■対右打者
右打者に対しては、高めの4シームと、外角低めのナックルカーブを中心に投球してきます。ナックルカーブは高速かつ横に大きく変化するボールです。

追い込んでからの外角のボール球を見極めるのは容易ではありません。早いカウントで多く投球される4シームを狙うのが得策だと考えます。4シームは高めに多く投球されているにもかかわらず、フライ割合が高くありません。

そのため高めのボールゾーンを見極めることがカギを握ると考えます。高めのストライクゾーンに投球された4シームを振り負けずに打てるかが勝敗を左右するでしょう。

■対左打者
左打者には60%の割合で投球するナックルカーブですが、対右打者ほど高い精度ではありません。甘いストライクゾーンへの投球も多く、狙うべきボールでしょう。

ベタンセス投手のボールは非常に高速です。甘いボールは一球で勝負する高い集中力をもてるかがポイントになるでしょう。

まとめ:ベタンセス投手攻略法
右打者は高めの4シーム狙い。
左打者は甘いナックルカーブを一球で仕留めろ!

世界最強軍団相手には、終盤の攻撃が大きなポイントとなります。強力リリーフ陣を打ち崩して目指せ世界一!!

※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)

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Baseball Geeks編集部