MLB

田中将大の2019年シーズンを分析!高めのストレートが増えた理由とは?

メジャー6年目となる今シーズンの田中将大選手(以下、田中投手)は32試合に登板し、11勝9敗、防御率4.45と安定した活躍をみせた。プレーオフでは3試合に先発して2勝を挙げた地区シリーズも好投し、その勝負強さはメジャーでも特異なものとなっている。
長年メジャーで活躍する田中投手の投球にはどんな秘密があるのだろうか。今回は、トラッキングデータを使って田中投手の投球を分析していきたい。

田中将大の2019年シーズンを分析!
「落ちなく」なっていた代名詞のスプリット
スライダーへの依存?変化量の質に反してストレートは効果的に
ポイントは高めのストレート?

「落ちなく」なっていた代名詞のスプリット

まず、田中投手の各球種の変化量をみてみる。メジャー平均との比較・そして18年・19年の差にも注目してみたい。

図1 2019年のボール変化量
図2 2018年のボール変化量

まず、田中投手の大きな特徴としてはスプリットやスライダーの変化の大きさが挙げられる。代名詞ともいえるスプリットは、メジャー平均(灰丸)と比べても非常に大きな落差であることがわかる。
参考:【動画あり】田中将大2017年分析 ~0.2%の魔球~

しかし2018年のデータと比較してみると、今シーズンはスプリットの落差が減少し、4シームのホップ成分も減ってしまっている。
4シームは「伸び」なくなり、スプリットは落ちなくなったことで、いわゆる両球種の差分も小さくなってしまった

スライダーへの依存?変化量の質に反してストレートは効果的に

では、今シーズンはどんな投球で打者を打ち取っていたのだろうか。投球割合・投球結果にも変化が表れている。

表1 各球種の投球割合、空振り率と打球の種類(2018年→2019年)
球種投球割合(対右)
(%)
投球割合(対左)
(%)
空振り率
(%)
ゴロ率
(%)
内野フライ率
(%)
4シーム23.0
→26.0
22.2
→32.7
16.1
→15.4
14.3
→12.8
0.9
→4.7
シンカー 5.6
→6.3
5.1
→3.0
15.4
→18.9
30.6
→24.2
0.0
→1.6
カットボール6.3
→2.8
1.2
→0.4
28.0
→20.8
18.0
→25.0
2.0
→4.2
スプリット24.8
→20.3
38.2
→32.7
34.0
→17.6
19.8
→29.2
1.1
→1.1
スライダー38.5
→41.5
26.7
→31.4
30.3
→30.7
14.9
→14.3
3.8
→3.9
カーブ2.5
→2.9
5.7
→3.4
27.8
→8.7
16.7
→17.4
0.0
→4.3

得意のスプリットは、空振り割合が大きく低下していることがわかる。先述したように、スプリットの落差が小さくなってしまったのが原因の一つであろう。また、代わりにゴロ率は増加している。4シームとの差分が小さくなった結果、空振りよりもゴロを打たせてとるための球種に変わったのかもしれない。

続いてスライダーは、2018年同様高いレベルで空振りが奪えている。投球割合は左右打者ともに増加しており、スプリットの投球割合が減少した分スライダーへの依存が増してたことが伺える。

また、4シームの投球割合は増加している。結果は空振り率が横ばいで、内野フライ率が急増している。ホップ成分は去年に比べて減少しているものの、なぜ結果を好転させられたのか。最後に投球コースに着目してみる。

対フライボール革命?高めに集められたストレート!

2018年と今シーズンの4シームの投球コースをまとめた。

図3 2019年の速球の投球コース(投手から見た図)
図4 2018年の速球の投球コース(投手から見た図)

今シーズンは4シームを高めに投げる割合が増加していることがわかる。
メジャーリーグでは過去最多の総本塁打数を記録するなど、アッパースイング気味のスイングで角度の大きな打球を狙う打撃がトレンド化している。低めのボールを長打を浴びる場面も少なくなく、高めに活路を見出したのであろう。

高めの4シームは、打者に向かう入射角が小さくなり、空振りやフライを増加させる効果がある。実際に高めの割合を増やした田中投手は内野フライを量産した。
スライダーやスプリットといった落ちるボールを得意とする田中投手であるため、高めの速球は低めのそれらのボールとピッチトンネルを構成することにもなる。来シーズンも、高めの速球は大きなポイントとなるかもしれない。
参考:「低めに投げろ」ってホント?データで探る野球指導の常識

まとめ

今シーズンの田中投手は、ボールの変化だけみると軸である4シームやスプリットの質を落としており、状態としてはベストとは言えなかったかもしれない。しかし、4シームを高めに、変化球を低めに投げ分けることによってローテを守り、自己最高となる32試合の登板を果たした。
この適応力、コマンド能力こそが大舞台で投げ続けてきた田中投手の最大の武器であるといえよう。
トレンドに合わせて柔軟に投球を変化させられる田中投手であれば、来シーズンも大きく期待できるに違いない。